抄録
可搬型で野外で容易に扱える分光反射係数計測システム(既報)を用いて, 最高分けつ期から登熟期における水稲個体群の反射スペクトルを波長域400~1,200nmで測定した. 小型クレーン車を利用することにより, 圃場での垂直下向き観測を実施した. 供試した材料は, 日本型, インド型及び日印交雑種を含む14の水稲品種である(第1表). 分光反射係数の測定後, 葉緑素計(富士フィルム)により各区の葉身クロロフィル含量(CHL:mg/dm2)を測り(較正図を第1図に示す), また, 抜き取りによって葉面積指数(LAI)を推定した. クロロフィルインデックス(CI:g/m2土地面積べース)はCHL及びLAIの積として求めた. スペクトルデータから緑(G:560nm), 赤(R:680nm)並びに近赤外(NIR:800~900nm)の各反射率を上記の三種の作物情報との相関関係を調ベ, 次の結果を得た(第2, 3表). 1. CHLと単独で最も相関の高かったのはG反射係数で, 相関関係(r)は-0.714であった(第2図). 2. NIR/R (バイバンド)比とCIとの相関関係は, NIR/R比とLAIとの相関関係よりも強い傾向を示した. 3. CIと最も高い相関係数を示したのは, NIR/G (バイバンド)比であった(r=0.816) (第3図). 以上の結果から, 野外の分光反射係数, 特に可視~近赤外域の情報では, LAIないしCHLを推定するよりも両者の積のCI(単位土地面積当たりクロロフィル量)を推定する方が, 精度が良くなることが示唆された. また, CIを推定するパラメータとしてはNIR/G及びNIR/Rが良好だったが、NIR/Gの方が若干有利であると思われた.