日本作物学会紀事
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トウモロコシの生育相の概念モデル : 栄養器官と生殖器官における分化と生長との相互関係を基礎にして
鳥越 洋一
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1986 年 55 巻 4 号 p. 465-473

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抄録
主要生育段階を基準にして, 栄養器官と生殖器官の分化と生長の動的なパターンによるトウモロコシの生育相の概念モデルを提案した. 主要生育段階は品種ならびに播種期を異にしても変わることがなく, 基準として利用できる. モデルの骨格は, 第1図に示すように, 葉原基分化過程における同伸葉・同伸分げつ関係により形成される主茎ならびに一次分枝と7主要生育段階とからなる. その結果, トウモロコシの全生育期間は4生育相に分けられる. 第一相は出芽期から雄穂分化期までの期間で, 葉原基の分化によって特徴づけられる. 第二相は雄穂分化期から絹糸抽出期までの期間であり, 葉原基の生長と穎花原基の分化という質的に異なる過程が並行して進む. この相はさらに3つの期間に細分することができる. 第一期は雄穂分化期から雌穂分化期までの期間であり, 最上位側枝が花芽誘導に至るまでの準備期間とみなしうる. 第二期は雌穂分化期から絹糸の伸長開始期までの期間であり, 穎花原基の形成期間である. 第三期は絹糸の伸長開始期から絹糸抽出期までで, 上位の節間伸長と絹糸の突出とにより特徴づけられる. 第三相は絹糸抽出期から澱粉蓄積始期までの期間で, 葉原基の生長と穎花の原基の生長とが競合する. この期間は品種とか播種期を異にしても変異はほとんど見られない. 第四相は澱粉蓄積始期から生理的成熟期までの期間で, 穎花の生長により特徴づけられる.
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