抄録
前報告のトウモロコシの生育相の概念モデルから提示された形態的・生理的な構成要素のうちから, 生育各相を特徴づける形質を検出し, それらの品種間差異を明らかにしようとした. 1. 生育各相の期間の長さを有効積算気温で評価して解析すると, 全生育期間の長短は, 出芽期から雄穂分化期までの第1相(X1), 雌穂分化期から絹糸伸長姶期までの第2相・第2期(X2), ならびに澱粉蓄積始期から生理的成熟期までの第4相(X3)の3変数によって次式で予測できる. Y(degree-days)=465.9+1.21X1+0.77X2+1.12X3(R2=0.827) 2. 第1相の有効積算気温は, 雄穂分化期の展開葉数別にみると, 葉展開速度と直線的関係にあり, また葉展開速度は葉原基分化速度に密接に関係する(第1, 2図). 葉原基分化速度には品種間差異が認められ, 15.3-20.0(degree-days/leaf primordium)の変異を示す. 3. 第2相・第2期の有効積算気温は穎花原基分化速度と直接的関係を示す(第3図). 穎花分化速度には, P3422の0.13(degree-days/floret primordium)からムツミドリの0.31(degree-days/floret primordium)までの品種間変異が認められる(第2表). 4. 第4相の有効積算気温は, 導入品種では粒の生長速度とほぼ直接的関係を示したが, 日本品種ではその関係は明瞭ではない(第5図). 粒の生長速度は粒重と相関関係をもち, XL1214の0.640(mg/degree-day)からムツミドリの0.944(mg/degree-day)までの品種間差異を示す(第2表). 5. 以上の結果から, 葉数, 穎花数, 粒重などの形態的形質から算出される葉原基分化速度, 穎花原基分化速度, ならびに粒の生長速度はトウモロコシの生育期間を決定する生理的形質とみなされる.