日本作物学会紀事
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トウモロコシの近交系と一代雑種の間の形態的・生理的形質の差異
鳥越 洋一真鍋 郁夫南 峰夫栗原 浩
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1987 年 56 巻 3 号 p. 395-403

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抄録
卜ウモロコシの一代雑種における雑種強勢の発現および収量性を既報の生育相の慨念モデルおよびそれに関連する形態的・生理的形質の観点から明らかにするため, 5系統の近交系とそれらの総当り交配で得られた一代雑種20系統を用いて比較検討した. その結果, 一代雑種では近交系と比べて次のような変化が認められ, 収量成立上有利に作用しているものと考察された. 1. 出芽期から雄穂分化期に至る第一相の期間は顕菩に短縮された(第1表). これは, 葉原基分化速度において超優性および完全優性が認められ(第3表), これらが著しく速められたためであった(第1図). 2. 雌穂分化期から絹糸伸長始期に至る第二相の第二期では, 頴花原基分化速度において超優性および完全優性が認められ, その結果, 分化頴花数が増加した(第3表). このことは, sinkの潜在的拡大を意味すると考えられた. 3. 絹糸伸長始期から絹糸抽出期に至る第二相の第三期の期間は, 展葉速度が速くなったことにより, 明らかに短縮された(第2表, 第2図). この期間は相互遮蔽の最も著しい時期であるが, 雌穂より上位の節間の急激な伸長およびこれに同調する雌穂の発達, すなわち, 絹糸の急激な突出によって, この収量成立上のクリティカル・ステージを回避しているものと考えられた.
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