抄録
小胞子初期の冷温処理による不稔の発生は, 穎花分化期から小胞子初期までの水温(前歴水温)および窒素供給量(前歴窒素)によって著しく変動した(第1表および第2図). 小胞子初期のイネの耐冷性は, 前歴期間の高水温(25℃)および低窒素(10ppm)によって増大し, 低水温(20℃)および高窒素(80 ppm)によって減少した. 前歴低水温による耐冷性の低下は水深によって異なり, 水深10 cmで大きく, 水深1cmでは小さかった(第2表). 穎花分化期以前および小胞子初期以後の水温および窒素供給量による耐冷性の変動は, 全くないかもしくは小さかった(第1表, 第2図). 上述の前歴期間はわずか10日間余にすぎないが, この期間の栽培条件によってイネの耐冷性が大きく変動する重要な時期である.