抄録
先報13)で得られた結果より, “集中型"根系をもつ作物群から陸稲を, "分散型"根系をもつ作物群からトウモロコシを対象としてとりあげた(第1図). とくにL型側根とS型側根の役割分化に注目しつつ, これらの作物の根系の構造を明らかにする目的で, それぞれの播種後1か月の根系について, 直接法によって根系構成要素の定量を行なった. 陸稲は29本の節根上に計42,394本の側根(高次の側根を含む)を発生させ, 根系全休の表面積は58,048mm2に達した. それに対し, トウモロコシでは, 17本の節根上に計11,628本の側根(高次の側根を含む)が発生し, 根系全体の表面積は122,697mm2に及んだ(第1表). 側根が全根系表面積に占める割合は, 陸稲で77%, トウモロコシで88%であった(第1表). 全側根の中でその構成をみると, 両種は似かよっていた. 第1次S型側根は数, 長さ, 表面積で全体の20%から25%の割合を占めた. 一方, 数では全体の5~6%を占めるにすぎない第1次L型側根は, そこから発生する高次のS型およびL型側根も含めると, 表面積で全体の約76%を占めた(第1表). 側根の分枝次元を比較すると, 陸稲は第3次側根, トウモロコシは第4次側根まで分枝していた. そして, 表面積において両種を比較すると, 高次側根(2次以上)の全根系および全側根に占める割合は, いずれもトウモロコシの方が高かった(第1表). 両種ともに, これら側根の1本の節根上における数, 長さ, 表面積の分布は極めて不均一であり, その中で第1次L型側根が大きな位置を占めていた(第2, 3図). 根系の土層別の分布を見ると, あらゆる土層で第1次L型側根はその上に分枝している側根も含めて, 根系の全表面積に対して, 極めて高い割合を維持していた. 根系全表面積の分布パターンを見ると, 陸稲では地表下約20cmにピークをもつ単純なカーブを描いた. それに対して, トウモロコシは表層から増減を繰り返して, 深層へと発達した. 全体的に見ると両種とも, 根系が一部に偏在することはなかった(第4, 5図). 以上の結果より, 陸稲の根系は, 相対的に節根に依存する程度が高く, 一方, トウモロコシでは側根に依存する程度が高い特徴を示した. 両種の根系の特徴をまとめると次のようであった. 陸稲では, 節根の走向角が小さく, 節根が密に分布しでいる結果生じた比較的狭い空間において, 第1次S型側根, L型側根が, ともにそれぞれ長さは短いが, 圧倒的に数が多いことによって根系拡大に貢献していた. また, トウモロコシにおいては, 側根は, 数では陸稲の約1/3あるいはそれ以下であった. しかし, 長さでは, 第1次S型側根は陸稲のそれとほとんど同じであったが, L型側根は変異が極めて大きく, 極端に短いものから, 長く, 高次側根を旺盛に分枝しているものまでが発生していた. これらが, 節根の走向角が大きく, さらに節根が疎に分布している結果生じた比較的大きな空間において, それぞれ根系拡大に寄与していた(第2表). これらのことより, 両型の根系拡大戦略が基本的に異なることが明確に示された.