日本作物学会紀事
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イネ科作物の根系構造の比較
山内 章河野 恭広巽 二郎
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1987 年 56 巻 4 号 p. 618-631

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抄録
改良根箱法を用いて, 13種のイネ科作物について(第1表), 根系構造を比較した(第1図・第2図). 節根(種子根を含む, 以下同じ) の走向角と(第3図), 側根の発達程度にもとづいて, それらの根系を次の4つのグループに大別した. 第1グループ:節根の走向角は比較的小さく, その多くは上壌を縦走した。節根数は4つのグループの中で最も多い傾向があった. 第1次側根は細く, 短く, 分枝に乏しかった. 水稲, 陸稲, シコクビエ, ヒエが含まれた. 第2グループ:数本の節根は株直下へ縦走するが, 他の多くの節根は, 走向角が大きく土壌中を斜走した. アワ, キビが含まれた. 第3ブループ:節根の走向角は大きく, 土壌中を斜走した. 第1次側根は長く, 太く, 分枝が盛んであった. トウジンビエ, モロコシ, 卜ウモロコシ, オオムギ, コムギ, ライムギ, エンバクが含まれた. 第4グループ:節根が斜走し, それらの発達は偏在して進んだ. 側根の発達は旺盛であった. ハ卜ムギが含まれた. これらの作物の根系構造上の特徴より, 第1グループおよび第3グループに属する作物の根系をそれぞれ "集中型", "分散型"と呼んだ. また, 第2グループの根系はそれらの中間型, ハトムギの根系は仲自な型を形戊すると考えた. この2つの型の根系間の重要な差異は, "集中型"では, 節根が, 比較的狭い土壌空間に高い密度で分布したのに対し, "分散型"では, 節根は比較的広い土壌空間に疎に分布したことであった. また, 種子根上の側根で比較した場合(第3表, 第4図, 第5図), 前者ではS型(短く, 比較的根径が小さく, 高次の側根を分枝しない)1次側根の発生数および単位種子根長当りの密度が高く, 根系構成要素に占める割介が比較白勺高かった. それに対し, 後者においてはS型1次側根は発生密度も低く, 根系要素中に占める割介が極めで小さかったが, L型(長く, 比較的根径が大きく, 高次の側根を分枝する)1次側根の割台が高く, 長さでみると根系のほとんどを占めていた. また, ハトムギの根系の側根発達の様相は, "集中型"根系のものに類似していた. この根系によるイネ科作物の分類と, 耐湿性・耐早性程度による分類10,21)とは比較的よく一致した.
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