日本作物学会紀事
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水稲の登熟過程にみられた品種間差異とその原因の解析 : 籾あたり葉面積の意義について
津野 幸人王 余龍
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1988 年 57 巻 1 号 p. 119-131

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抄録

1. 水稲品種, 南京11号, 水原258号, アケノホシ, ヤマビコの4品種を供試し, 最大葉面積指数が5以下で, 穎花数を約4万個/m2確保した状態での穂重増加経過を追跡調査した. これらの品種間にみられる登熟程度の差異と, その原因について解析をおこなった. 2. 登熟程度の良否を粗籾千粒重/精籾千粒重(比重1.06以上)比で表現した. この数値でみるとヤマビコ, 南京11号, 水原258号, アケノホシの順に登熟程度は低下した. 3. 収穫時の粗籾千粒重は, すでに出穂後15日の生籾千粒重と1.0に近い相関係数を示し, 初期に決定されるところの玄米容積に規制されることがわかった. 4. 玄米容積を示す出穂後15日の生籾千粒重は, 出穂後5日の籾の蔗糖含量と高い正の相関(r=0.981)をもち, その糖含量の多少は籾あたりの葉面積および穂軸重でもって説明できた(重相関係数=0.936). 5. 出穂後20~40日間の穂重増加は, 稈・葉鞘部の貯蔵炭水化物量とその期間の光合成量に依存しており, 後者は葉面積/籾に支配されている. 出穂後40日における葉面積/茎と登熟期間の根の呼吸速度の平均値との間にはr=0.953という相関係数が得られた.

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