日本作物学会紀事
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水稲多収性品種の生理生態的特徴について : アケノホシと日本晴の比較 : 第1報 収量および乾物生産
〓 才忠平沢 正石原 邦
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1988 年 57 巻 1 号 p. 132-138

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抄録

水稲品種の多収性機構や多収穫水稲のもつべき生理生態的諸性質を明らかにするため, 最近育成された多収性品種アケノホシと日本晴を用い, 両品種の収量および乾物生産特性について検討した. アケノホシは日本晴に比べて地上部乾物重が大きく, 1穂穎花数が著しく多いので単位面積当り穎花数も多く, 収量は170kg/10a以上多かった. アケノホシの地上部乾物重が大きい要因を生長解析によって検討したところ, アケノホシの個体群生長速度(CGR)が日本晴に比べてとくに登熟期に大きくなり, この両品種の相違は平均葉面積指数((LAI)^^^-)ではなく, アケノホシの純同化率(NAR)が日本晴より大きいことによってもたらされていることが認められた. NARは主として葉の立体的配列と関連する受光態勢および個体群の葉群を構成する個々の葉の光合成速度とによって規定されるが, 個体群構造, 吸光係数には両品種の間でほとんど相違は認められなかったことから, 両品種のNARの相違は葉の光合成速度にあることが推察された. なお, 収量に影響するもう一つの要因, すなわち, 穂における光合成産物の蓄積過程についてみると, アケノホシは乾物生産が高く穎花数が多くシンクが大きいだけでなく, 穂への光合成産物の蓄積能力が長く持続するのに対し, 日本晴はその能力が早く低下する, いいかえると穂の老化が早いことが認められた.

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