日本作物学会紀事
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水稲多収性品種の生理生態的特徴について : アケノホシと日本晴の比較 : 第2報 個葉光合成速度の相違とその要因
〓 才忠平沢 正石原 邦
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1988 年 57 巻 1 号 p. 139-145

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抄録

前報において, 日本晴と最近育成された多収性品種アケノホシを用いて乾物生産過程を追究し, 日本晴にくらべてアケノホシの乾物生産量が多いことに葉身の光合成速度が関係していることを推察した. 本研究はこの推察の妥当性を検討するために行った. その結果, 展開完了直後の葉身の1日の最大の光合成速度にはアケノホシと日本晴の両品種でほとんど相違はなかったが, 葉身の老化に伴なう光合成速度の低下程度が異なった. すなわち, 展開後日数が経過した葉身の光合成速度および日中の光合成速度はアケノホシで大きく, アケノホシは日本晴に比べて品種の光合成能力(展開完了直後の葉身の最大光合成速度)に近い高い光合成速度を維持していることが認められ, 上述した推察が妥当であることが確かめられた. さらにアケノホシと日本晴のこのような光合成の相違の生ずる要因を根に着目して検討した結果, アケノホシは日本晴に比べて, 蒸散に伴って生ずる受動的吸水能力の指標となる水の通導抵抗が小さく, また能動的吸水能力を表わし根の生理的活性の指標となる出液速度が大きく, とくに両品種の相違は老化した葉身や生育後期に大きいことが認められた. さらにアケノホシの地上部重/地下部重, 葉面積/地下部重はいずれも日本晴に比べて小さく, アケノホシは根がよく発達していた. これらの結果からアケノホシでは根がよく発達するという性質が受動的, 能動的吸水能力を高め, 光合成速度を高く維持していると推察した.

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