カワムギ, ハダカムギ, コムギ, ライムギ, エンバクを湛水・湿潤・乾燥の土壌水分条件下で播種後7週間目から成熟期まで生育させた. そして, それらの生育, 乾物生産および蒸散係数の結果から, 耐湿性・耐早性の作物間差異を比較, 検討した. 生育は, いずれの作物においても, 湿潤条件下に比べ湛水および乾燥条件下で抑制されたが, 抑制程度は作物によって異なっていた. 乾物生産では, ハダカムギ, コムギ, ライムギ, エンバクは湛水条件下より乾燥条件下で, 逆にカワムギでは乾燥条件下より湛水条件下でより多く乾物を生産した. そこで, 前者を耐早性程度が耐湿性程度より大きい作物, 後者を耐湿性程度が耐早性程度より大きい作物とした. また, 湛水条件下または乾燥条件下における蒸散係数の, 湿潤条件下での蒸散係数に対する比が1に近いか, あるいはそれ以下になる場合, その作物は, それぞれ湛水または乾燥条件に対して安定であり, その比が1を上回るほど感受性が高いと考えた. その結果, 各作物は一様に乾燥条件に対して安定していたが, 湛水条件に対しては顕著な作物間差が認められた. 耐早性程度が耐湿性程度より大きいとした作物の中で, ライムギ, エンバクは湛水条件に対して著しく感受性が高く, またハダカムギ, コムギは比較的感受性が高かった. 一方, 耐湿性程度が耐早性程度より大きいとしたカワムギは, 湛水条件に対し安定していることが示された. これらの作物の耐湿性・耐早性を, 各土壌水分条件下での節根発生能力, 根系の生長・水分吸収力との関連で議論した.