日本作物学会紀事
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茶樹の根群に関する栽培学的研究 : 第6報 断根強度が根の再生に及ぼす影響
山下 正隆
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1988 年 57 巻 1 号 p. 48-52

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抄録

本報告では断根強度が根の再生力に及ぼす影響を明らかにするとともに, 最も効果的な処理強度を検討した. 断根処理は9月下旬に行い, 強度は株元からの処理位置を変えることにより処理I(最強:最も株元近く)~V(最弱)の5段階に設定した. 断根処理による根の切除率は全根重の約20%~80%の範囲であった. 地上部に対する処理強度の影響は比較的小さかった. 掘り取り調査時の根を木化根と白色根とに分けると, 木化根重はいずれの処理区も対照区を下回り, 処理間では, I, II区がIII~V区をかなり下回った. これに対し, 白色根重はいずれの処理区も対照区を上回り, 処理間では, III区が最も大きく, I, II区は最も劣った. このような白色根の増加は深耕部すなわち切断部付近だけでなく, 株元部においても顕著であった. この結果, 全根重に占める白色根の比率は対照区に比べて10~20%高まり, III~V区ではT-R率も対照区以下であった. 断根後の根の再生力を比較した結果, 木化根の切断部付近における白色根発生数は太い根ほど多かったが, 単位木化根当りの発生重量はIII区が最も大きく, I, II区が最も小さかった. また, 株元部の白色根についてみた単位木化根重当りの重量も同様な傾向を示した. このような根の再生力の大きさは処理初年目の一番茶生産力とも密接に関係すると思われた. 根群の更新を目的とする断根では, 処理強度も更新効果を左右する要因の一つであり, 十分な効果をえるためには適切な処理強度の選択が必要である.

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