日本作物学会紀事
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春播コムギの短稈および長稈品種の収量性と稈構成物質の消長
高橋 肇中世古 公男後藤 寛治
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1988 年 57 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

外国および日本産品種(1985年12品種, 1986年23品種)を短稈, 長稈品種群に分け, その収量性, 収穫指数の差異を明らかにするとともに, 1986年では登熟期間中における稈の組織構成成分(細胞壁構成物質と細胞内容物質)の消長について比較, 検討した. 短稈品種群は長稈品種群に比べ全乾物重(成熟期)が小さく, 収穫指数が高い傾向を示したが, 両群の子実収量は年次により異なり, 乾燥気味に経過した1985年では全乾物重の大きい長稈品種群が, 播種期が遅く, 湿潤気味に経過した1986年では収穫指数の高い短稈品種群が多収を示した. 乳熟期における稈の乾物重, 細胞壁構成物質重およびその割合は長稈品種群が有意に大きく, いずれも全乾物重(成熟期)と正の相関を示した. 一方, 細胞内容物質重は短稈品種群に高い値を示すものが多く, 全乾物重との間には弱い負の相関が認められた. 細胞壁構成物質は開花直後に最大となり, その後ほとんど変化しなかったが, 細胞内容物質重は乳熟期に最大となり, 成熟期にかけて減少し, 稈に蓄積された貯蔵養分が子実へかなり転流していることが示唆された. 細胞内容物質の変化から, 貯蔵養分の子実生産に対する貢献度を推定したところ, 貯蔵養分の貢献度は全品種を平均すると30.8%であったが, 一般に短稈品種群で高い(33.9%)傾向が認められた.

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