抄録
インゲンマメの4品種とこれらの組合せによるF1およびF2雑種を用いて, 葉の調位運動における品種間の差異とその遺伝性を検討した. ポット栽培した供試個体の第1あるいは第2本葉の左側小葉に人工光を継続的に照射して, その「上下傾斜角」と「横向き傾斜角」を測定した. 得られた結果の大要は, 以下のとおりである. 4つの品種における小葉は,「上下傾斜角」が大きく, しかも入射光と葉面法線となす角度が, 著しく小さくなる方向に傾斜するものと,「横向き傾斜角」が大きく, 入射光との角度が大きくなるものの, 2つのタイプに大別された. 前者の品種を「上下傾斜型」, 後者を「横向き傾斜型」と呼ぶことにした. 「上下傾斜型」と「横向き傾斜型」の品種を両親とする2組のF1雑種は, ともに「上下傾斜型」の親と等しい葉面傾斜を示し,「上下傾斜型」の運動が「横向き傾斜型」に対して, 遺伝的に優性とみられた. 2組のF2集団における「上下傾斜角」と「横向き傾斜角」の分布によって, これらの傾斜角の変化に関わる因子は極めて密接な関係にあるが, 互いに独立的であることが示唆された. また「上下傾斜型」の小葉運動は, 大きな「上下傾斜角」と小さな「横向き傾斜角」をもたらす, 修正効果を伴う2種類の優性主働因子によって支配されているようにみうけられた.