抄録
生葉に閃光を照射すると, P700の酸化・還元による吸光度変化(700 nm 付近)が観察される. P700の吸光度変化に対する測定光(703 nm)強度の影響および, 閃光の強度と波長の影響を検討し, インゲンマメの生葉中における光化学反応と電子伝達の機構を解析し・た. 閃光照射によるP700の酸化・還元反応の光飽和曲線は双曲線となったが, 測定光強度とP700の酸化量の関係は指数関数となった. 閃光によるP700の酸化と還元の作用スペクトルは, 600 nm 以下の波長域ではほとんど同じであり, 481 nmに最小値を, そして450 nm 付近にピークを示す. しかし, 630 nm 以上の波長域では明らかに異なっている. すなわち, P700の酸化の作用スペクトルは, 621 nm にピークを示し 683 nm で一度低下するが, 700 nm にもう一つのピークを示した. 一方, P700の還元の作用スペクトルは, 660 nm 以上の波長域で低下した. なお, フラッシュ・フォトリシス法によるP700の吸光度変化の解析により, 濃厚な光合成色素を持つ作物の生葉中で起こる光化学反応について考察した.