抄録
イネの茎葉生育の発育形態的な規則性を明らかにするために, 直播で1ポット1株1本立てにした個体における分げつの出現節位を4年間詳しく調べた. 分げつは各母茎上で下位のものから順に出現してくるので, 個体内の各母茎上における最終分げつの出現節位の位置関係によって分げつの出現範囲が定められ, 理論的な最大分げつ数も決定される. 従来この位置関係の定説的知見は, 同伸葉理論の「標準株」によって与えられていた. しかし, 実際の最終分げつの出現節位は, この定説的知見とは系統的に異なり, かつて八柳らが仮定した最終分げつの出現節位にほぼ一致した. この本報の試験結果を「標準株」からみてみると, 最終分げつの出現節位は, 一次分げつ上で1節上に, ニ次分げつ上で1, 2節上に, 三次分げつ上で2, 3節上にと規則的にずれ, かつ出現しないはずの分げつが高次分げつになるほど数多く出現した. これと同様とみなしうる事例はすでに二, 三報告されている. したがって, 最終分げつの出現節位は, 原則として八柳らの仮定に一致するとみるのが妥当であると判断した. 八柳らの仮定に基づく最大分げつ数(T max. と略称)は, 一般に一次最終分げつの出現節位を第n節とすれば, T max.=2nで与えられることが分った. 三次分げつまでの範囲でみても, この最大分げつ数は「標準株」のそれの1.5~2倍(6≦n≦13)あり, 個体の分げつ力は従来考えられていたものよりかなり大きいことが分った. また, nの値は施肥量に対する変動がきわめて小さいので, 分げつ力を評価する遺伝的指標にもなりうると考えられた.