抄録
植物は一般に機械的刺激によって矮性化することが知られている. そこで本研究では, ダイズの草型と受光体制ならびに生育・収量との相互関係を解明する一環として, 30cmの正方形植えに栽植した有限型品種キタホマレについて, 第5本葉展開期 (7月10日) から幼莢期 (栄養生長完了期, 8月6日) まで4週間, 群落上層に機械的刺激を与え, 形態的変化を明らかにするとともに, その群落構造, 乾物生産および子実収量に及ぼす影響を調査した. 機械的刺激によって主茎の生長が抑制されたが, 分枝の生長は促進され, 処理後の各器官における主茎-分枝比 (乾物べース) は, 無処理区1対1に対して処理区では1対2~3となった. 刺激を受けた植物体は, 形態的には, 茎が太く, 短縮し, 短い葉柄をもつ小型の厚い葉を着生し, 分枝数の多い典型的な矮性型の草型を示した. また, 葉は小型化したが, 総節数が増加したため, 葉面積指数は無処理区と大差なく推移した. 処理後の葉群構造は, 典型的な天井型構造を示したが, 吸光係数は無処理区に比べ小さかった. 莢の発育は, 開花期間中は機械的刺激により遅れる傾向が認められた. しかし, 処理終了後の登熟期間中では, 処理区は純同化率および莢実乾物増加速度が大きく, 分枝の着莢数が増加して成熟期の子実収量は無処理区に比べ38%大きかった. このような矮性型の草型は, 相互遮蔽が大きく, 倒伏の危険性がある密植条件下では有利なものと推察された.