日本作物学会紀事
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東北タイの天水田におけるイネの収量に変異をもたらす要因の分析
宮川 修一黒田 俊郎
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1988 年 57 巻 4 号 p. 773-781

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抄録
東北タイの天水田稲作の実態を知るため, コンケン市近傍の農村ドンデーン村で1981年と1983年に農家水田の収量調査を行った. その結果同一村内でも水田の筆間の収量の変異がきわめて大きいことがわかった. 1981年は雨期の後半に雨量が不足気味であったため, 保水性の劣っている地形的に高位の水田では低位の水田に比較して63%の収量しか得られなかった. 種々の要因を数量化したところ, 各水田の水条件, 土壌肥沃度および栽培品種の3要因により, 収量の変異の45%が説明可能であった. 特に水条件と収量との偏相関係数は0.465で要因間では最大を示した. 1983年は降雨量が多く平均収量は1981年より増加し, 水田間の変異は縮小した. 上記3要因のほか, 各水田の前年の作柄ならびに当年の施肥の有無を数量化して収量の変異の貢献度を調べたが, 5要因でも17%が説明できたに過ぎなかった. 一方, ワラ重についてはこの5要因によって47%が説明可能であり, 要因のうちでは土壌肥沃度の関与の程度が最大であった. 以上のことから, 降雨量の変動が大きいこの地域では, 灌漑施設の整備が望まれるとともに, 収穫指数の高い品種または栽培方法の導入が必要であると考えられた.
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