抄録
圃場条件下で, 同じ日の, ほぼ同じ時刻に, 飽和光下で測定された同一葉位の一群の個葉の光合成速度 (CER) の間に, 最大幅9~12 mg CO2dm-2h-1程度の変異がみられた。著者らはこの変異をCERの個葉間変異と名付けその特徴と発現の生理的基礎を検討し次のことが明かとなった。(1) CERの個葉間変異はつねに気孔伝導度 (gs) と密接に関連していた。(2) 同一葉位の一群の個葉のうち, ある日, ある時刻において高いgs値を示すものは, 他の日, 他の時刻においても高いgs値を示した。すなわち, gsの大小についての個葉間の順位は時間的に安定していた。(3) 多数の茎について上位3葉のgsを測定したところ, 第I葉のgsが大きい茎では第II, III葉のgsも大きいという傾向がみられた。すなわち, gsの個葉間変異は個々の茎を単位として起こることがわかった。(4) 日中のgsが大きい個葉では日没後における葉身基部切断面からの出液速度が大きいという関係が認められた。(5) 多数の茎について上位3葉の基部切断面からの出液速度を測定したところ, 第I葉の出液速度が大きい茎では, 第II, III葉のそれも大きいという傾向があった。(6) 以上のことから, 個々の茎が所有する根の量や活力に差異があり, そのため葉への能動的な水供給力について茎を単位とした変異が生じ, これがgs, ひいてはCERの個葉間変異をもたらすことが示唆された。