日本作物学会紀事
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ダイズ芽ばえの伸長に伴う抽出力, 胚軸の太さ, ならびにエチレン発生量の変化
鄭 紹輝井之上 準
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1989 年 58 巻 3 号 p. 357-363

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抄録
25℃暗黒条件下において, 非接着型ストレーン・ゲージ荷重変換器を用いて, 伸長程度の異なるダイズ (品種:アキセンゴク, フクユタカ) 芽ばえの抽出力を測定するとともに, 抽出力の測定中 (芽ばえの頂端部に荷重がかかった場合) に起こる下胚軸の肥大および芽ばえからのエチレン発生量を測定した。その結果, 芽ばえの伸長程度によってやや異なったが, 全体的にみれば抽出力は測定開始後4~5時間までは直線的に急増し, その後の増大はゆるやかで, 測定開始後48~60時間で最大に達した。なお, 最大抽出力は芽ばえの長さが短いほど大きかった。芽ばえの頂端部に荷重をかけられた個体では, 無処理の個体に比較して芽ばえが短くなったが, 同時に下胚軸が太くなった。このように頂端部に荷重をかけられ, 下胚軸が大くなりつつある芽ばえからのエチレン発生量は, 無処理の芽ばえに比較して4~6倍に増大した。ところが, エチレン・アセトアルデヒド除去剤を用いて, 発生したエチレンを除去すると, 下胚軸の肥大程度がやや減小した。これらの結果から, ダイズの芽ばえは, その出芽過程において土塊やクラストに遭遇するとエチレンを発生し, そのエチレンの作用で下胚軸が肥大し, 抽出力が増大して出芽するものと推察された。
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