大気湿度が水稲個体群の光合成速度に及ぼす影響を明らかにするために, 模擬個体群 (120×60 cm, 栽植密度約40本/dm
2, 葉面積指数6~7, 草高約30 cm, 葉齢約6) を用い, 22, 28, 34℃の気温で, 大気の相対湿度の変更に伴う光合成速度の差異を人工光下で調べた。さらに, 大気の相対湿度が模擬個体群上層部の葉身の気孔開度, 葉温に及ぼす影響を調べ, これらと模擬個体群の光合成速度との関係を検討した。その結果は次の通りである。1. 水稲模擬個体群の光合成速度は, 相対湿度の上昇, 下降に伴い, 速やかに増大, 減少した。相対湿度60%における光合成速度は気温の上昇に伴い増大したが, 90%においては, 気温28℃までは増大し, 34℃になると減少した。2. 相対湿度の上昇, 下降に伴い, 模擬個体群の上層部における葉身の気孔開度は速やかに増大, 減少し, その傾向は気温が高いと著しかった。一方, 葉身は概して気温より低く, 相対湿度の上昇, 下降に伴い速やかに上昇, 下降した。葉温と気温の差は, 両湿度条件ともに気温が高い程大きくなり, その傾向は相対湿度60%で著しかった。以上のように, 大気の相対湿度は模擬個体群の光合成, 気孔開度および葉温に速やかに影響することが明らかになった。また, 光合成速度と気孔開度, 葉温との関係を検討した結果, 相対湿度の変更による光合成速度の変化には, 葉温が適温域内にある場合は主として気孔開度が関与し, 適温域外にある場合は, さらに葉温が関与すると考えられた。
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