抄録
前報で明らかにした空気湿度, 葉の水ポテンシャル (Ψl) の低下に伴う水稲葉身の光合成速度の減少が, 気孔を通じての葉内へのCO2の供給と葉肉細胞の光合成系の活性のどちらの低下によって主として引き起こされるかを葉内のCO2濃度 (Ci) の変化を通じて検討した。(1) 飽差が増加し光合成速度が減少すると, Ciは減少し, 空気湿度の低下は主として葉内へのCO2の供給速度の減少を通じて光合成速度に影響することがわかった。(2) Ψlが低下して光合成速度が減少する時には, Ψlが-5~-6 barに低下するまでCiは減少したのに対して, Ψlが-5~-6 bar以下に低下するとCiは増加し, Ψlの低下に伴う光合成速度の減少の主たる要因はΨlが-5~-6 bar以上では葉内へのCO2の供給速度の減少であり, Ψlが-5~-6 bar以下では葉肉細胞の光合成系の活性の低下にあることがわかった。また, 葉位, age, チッ素濃度が異なっても, 光合成速度の減少の主たる要因が替わるΨlには相違が認められなかった。(3) 土耕栽培しΨlを徐々に低下させた水稲は, 水耕栽培しΨlを急激に低下させた水稲に比べてΨlの低下に対する光合成速度, 拡散伝導度の減少割合が小さく, 光合成速度の減少の主たる要因が葉肉細胞の光合成系の活性に替わるΨlも低く, 浸透調整が関係していることが推察された。