抄録
ネピアグラス (Pennisetum purpureum Schumach) を那覇, 宮崎及び東京にて, 2段階の刈り取り間隔のもとで栽培し, 葉身及び稈の乾物収量とin vitro-可消化乾物収量との関係を調べた。葉身, 稈ともに, 消化率とリグニン含有率との間には1次回帰で示される有意の負の相関があり, リグニン含有率と収量との関係は双曲線回帰の関係であった。従って, 収量と消化率との間の関係は双曲線回帰の関係であらわされた。しかし, 両回帰式とも曲率は小さく, 直線回帰としても有意であった。消化率は葉身に比べて稈の方が低く, 稈では下部ほど消化率が低かった。稈の各部位とも, 高温であること, 刈り取り間隔が長いこと, 出穂期に近いことにより消化率は低下し, その低下は稈の下位ほど強い傾向があった。しかしこれらの変化は比較的小さいので茎葉の全乾物収量に対する可消化全乾物収量の回帰は正の直線回帰であり, 両収量のこの関係には, 地域, 季節及び刈り取り間隔による変動はあまりなかった。全乾物収量が10 t/haから30 t/haに増大するに伴い乾物消化率は74.3%から60.0%に低下した。平均的な乾物消化率は約65%であり, 暖地型牧草の中では中庸の消化率と推察された。