日本作物学会紀事
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有効積算温度とイネの生長 : 第1報 有効下限温度の実験的算出法とイネの栄養生長への応用
江幡 守衛
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1990 年 59 巻 2 号 p. 225-232

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抄録
イネ栄養生長における温度反応について有効積算温度 (EHUS) の観点から解析し, とくに有効下限温度 (BT) の新しい決定法を検討した。人工気象室の異なる3温度条件下で生育させたイネの出葉期間を精査した結果, 同一葉位では, 出葉期間とその期間の積算温度との関係は直線回帰式であらわすことができ, この関係が成立する温度範囲では, BTおよびEHUSの一定性が成立つことを明らかにした。一般に或る生育に関して生育期間とその期間の積算温度との関係を表わす直線回帰式では, BT はその回帰係数, EHUSは定数項として示される。このことから適当な温度範囲内で設定した最小二つの異なる温度条件で実験的に得られる生育期間-積算温度の直線回帰式から, BTとEHUSとが容易に求められることを明らかにした。イネの出葉のBTは下位葉では6~7℃であるが葉位と共に増加し, 最上位葉では約12℃となり, 生育段階が進むほど高温要求性が高まった。また陸稲は水稲に較べてBTが低く, 低温生育性がまさる傾向を示した。一般に生育期間はBT, EHUSおよび期間平均気温の函数として双曲線式で示される。しかし幼苗期から出穂までの期間についてはBTおよびEHUSは主稈葉数の函数として示された。以上の結果から幼苗期から出穂までの期間, 穎花分化期および減数分裂期などから出穂期までの期間などを気温資料から推定する一般式を提示した。
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