抄録
人工気象室の異なる温度下で生育させたイネの生育の温度反応の観察結果から算出した穂の抽出期間, 開花期間の有効下限温度はササニシキでは, それぞれ12.1℃および11.5℃であった。日本型 (ササニシキ) とインド型 (光〓) のイネの登熟期の各期の温度反応を比較した結果, 有効下限温度はいずれも登熟初期ほど高いが登熟後期には4~5℃程度低下すること, インド型イネでは約0.6~2.7℃高いことなどが判明した。しかし有効積算温度は登熟初期を除き, インド型イネがかえって低い。出穂期から成熟期までの全期間では, 両品種の有効下限温度と有効積算温度は7.5℃と9.4℃および690℃・日と516℃・日であった。インド型イネは日本型イネに比べ登熟に対する高温要求性が大きいが, 成熟に要する温度量はかえって小さく, そのため成熟が速いと考えれる。日本型イネの間では登熟に対する温度反応の品種間差異は比較的小さく, 本実験で得られた有効下限温度7.5℃, 有効積算温度690℃・日はほぼ平均的な値と考えられた。このことは作況試験成績の資料から算出された値からも裏付けられた。前報の結果と併せ考えると, イネの幼苗期から成熟期までの有効下限温度の変化は単頂曲線となり, そのピークは12~13℃で止葉抽出期から出穂期にかけて出現した。