日本作物学会紀事
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59 巻, 2 号
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  • 池田 武, 佐藤 庚
    1990 年59 巻2 号 p. 219-224
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本実験は, 倒伏防止を図りつつ, 栽植密度を高めることにより, 10 a当り300 kg以上の収量を継続的に得られないか, また栽植密度の増加に伴って, 減少する程度が小さく, 従って密植による収量増に大きく貢献する形質は何であるか, 密植が増収をもたらす機構をどう理解すべきかなどについて明らかにする目的で, 1978, '80, '81年の3年間実施された。試験圃場は, 東北大学農学部構内圃場である。供試品種は有限伸育型の5品種である。栽植密度は, m2当り6株から100株の範囲とし, 1株1本植とした。結果は以下の通りである。1. 収量は5品種とも栽植密度を高める程, 高まる傾向にあった。毎年10 a当り300 kg以上の収量を得るためには, m2当り約25株以上の栽植株数, 1000以上の莢数, 開花期および登熟期のLAI 6.0以上が必要であった。但し, 25株/m2以上の密植による増収を期待するためには, 倒伏防止技術の開発又は品種の耐倒伏性の大幅な改善が必要である。2. 6株/m2時のm2当りの各収量構成要素の相対値を100とした時, 第2表にあげた各要素のうち, m2当り分枝数・節数を除いて, m2当り100株の値が6株の値の約2.1~3.4倍の範囲内にあった。しかし, m2当り分枝数および節数は6株/m2の値の約5.5, 6.1倍と高くなり, これが収量増に大きく寄与したことが示唆された。3. ライデンについてみると, 主茎節位別のm2当り開花数は, 密植では中間節位に, 疎植では下位節に多かった。100粒重は, 最上位節が最も高く, 下位節になる程漸減した。
  • 江幡 守衛
    1990 年59 巻2 号 p. 225-232
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ栄養生長における温度反応について有効積算温度 (EHUS) の観点から解析し, とくに有効下限温度 (BT) の新しい決定法を検討した。人工気象室の異なる3温度条件下で生育させたイネの出葉期間を精査した結果, 同一葉位では, 出葉期間とその期間の積算温度との関係は直線回帰式であらわすことができ, この関係が成立する温度範囲では, BTおよびEHUSの一定性が成立つことを明らかにした。一般に或る生育に関して生育期間とその期間の積算温度との関係を表わす直線回帰式では, BT はその回帰係数, EHUSは定数項として示される。このことから適当な温度範囲内で設定した最小二つの異なる温度条件で実験的に得られる生育期間-積算温度の直線回帰式から, BTとEHUSとが容易に求められることを明らかにした。イネの出葉のBTは下位葉では6~7℃であるが葉位と共に増加し, 最上位葉では約12℃となり, 生育段階が進むほど高温要求性が高まった。また陸稲は水稲に較べてBTが低く, 低温生育性がまさる傾向を示した。一般に生育期間はBT, EHUSおよび期間平均気温の函数として双曲線式で示される。しかし幼苗期から出穂までの期間についてはBTおよびEHUSは主稈葉数の函数として示された。以上の結果から幼苗期から出穂までの期間, 穎花分化期および減数分裂期などから出穂期までの期間などを気温資料から推定する一般式を提示した。
  • 江幡 守衛
    1990 年59 巻2 号 p. 233-238
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    人工気象室の異なる温度下で生育させたイネの生育の温度反応の観察結果から算出した穂の抽出期間, 開花期間の有効下限温度はササニシキでは, それぞれ12.1℃および11.5℃であった。日本型 (ササニシキ) とインド型 (光〓) のイネの登熟期の各期の温度反応を比較した結果, 有効下限温度はいずれも登熟初期ほど高いが登熟後期には4~5℃程度低下すること, インド型イネでは約0.6~2.7℃高いことなどが判明した。しかし有効積算温度は登熟初期を除き, インド型イネがかえって低い。出穂期から成熟期までの全期間では, 両品種の有効下限温度と有効積算温度は7.5℃と9.4℃および690℃・日と516℃・日であった。インド型イネは日本型イネに比べ登熟に対する高温要求性が大きいが, 成熟に要する温度量はかえって小さく, そのため成熟が速いと考えれる。日本型イネの間では登熟に対する温度反応の品種間差異は比較的小さく, 本実験で得られた有効下限温度7.5℃, 有効積算温度690℃・日はほぼ平均的な値と考えられた。このことは作況試験成績の資料から算出された値からも裏付けられた。前報の結果と併せ考えると, イネの幼苗期から成熟期までの有効下限温度の変化は単頂曲線となり, そのピークは12~13℃で止葉抽出期から出穂期にかけて出現した。
  • 伊藤 浩司, 大井 進, 武田 友四郎, 大久保 忠旦, 星野 正生, 宮城 悦生, 沼口 寛次, 稲永 忍, 外山 信男, 永井 史郎, ...
    1990 年59 巻2 号 p. 239-244
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東京, 名古屋, 福岡, 宮崎, 那覇及び西表島で栽培した植付け当年のネピアグラス (Pennisetum purpurum Schumach), 品種メルケロンの葉身, 稈 (葉鞘を含む) 及び枯死部のメタン発酵性を調査した。収穫部各部の発酵ガス発生率 (材料の単位乾物重当りのガス発生量) は地域によりかなり異なったが, 葉身及び稈における地域差は気象要因の地域差などに関連した特定の傾向を示さなかった。しかし, 枯死部では平均降水量が多いほど, また, 稈では生育日数が長いこと及び乾物収量が大きいことに伴って, それぞれ, ガス発生率は低い傾向があった。収穫部全体のガス発生率も全乾物収量が大きいほど低かった。全材料の平均ガス発生率 (L kg-1) は, 葉身:542, 稈:352, 枯死部:342であり, 葉身の値は他に比べて有意に高く, 他の作物, 野草及び農産廃物などにおける値の中の高位値に匹敵した。発酵ガスのメタン含有率は各材料とも約60%とみなされた。これらの調査結果と各地域の乾物収量の値とを用いて年間メタン収量を推定したところ, 各地域とも年間1回刈りの方が2回刈りに比べて大きかった。全材料の平均メタン収量は約7, 000 m3 ha-1であり, この値は他のC4-及びC3-型飼料作物・牧草の値に比べて大きく, ネピアグラスはメタン主産原料として有望な作物と推察された。
  • 中條 博良, 藤田 明彦, 三本 弘乗
    1990 年59 巻2 号 p. 245-252
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    節間伸長開始期における分げつ地上部の生長と出穂率との関係を品種登録年を異にする西日本品種の新中長とオマセコムギ (ともに秋播性程度II) および北海道春播品種の農林29号 (秋播性程度I) を用いて検討した。温室・長日条件へ移行後1週間の地上部乾物重増加量 (ΔD) および1週間目の全窒素含有量 (N量) は, 出穂率が低かった新中長が高かったオマセコムギよりも強大分げつでは多く, 弱小分げつでは少なかった。出穂率が100%よりも低くなる限界のΔDおよびN量は新中長がオマセコムギよりも多かった。出穂率が100%よりも低い分げつでは, ΔDおよびN量と出穂率との間に同一品種ではほぼ比例的な関係が認められた。分げつの出穂, 不出穂の区別が明確になった温室・長日条件へ移行2週間後には, 出穂分げつは不出穂分げつに比べて乾物重, N量, 追肥窒素吸収量が多く, N量に占める追肥窒素の割合が高かった。長日と短日の両条件で生育した農林29号において, 日長処理開始後1週間のΔDは強大分げつでは長日区が短日区よりも, 弱小分げつでは短日区が長日区よりも多かった。長日区, 短日区ともに, ΔDと出穂率との間にはほぼ比例的の関係が認められた。N量は, 出穂分げつでは多く, 不出穂分げつでは少なかったが, 出穂分げつでは長日区と短日区との間に差を示さなかった。出現した分げつが発根して独立生長を開始するまでの生長量及び窒素吸収能力は, 出穂率が低い分げつほど小さかった。
  • 中條 博良, 藤田 明彦, 三本 弘乗
    1990 年59 巻2 号 p. 253-256
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コムギにおける根の発達を品種間で比較検討するために, 登録年代を異にする西日本の2品種, 新中長とオマセコムギ, を小型容器で栽培し, 根の分布を調査した。主稈および分げつの第一次根数 (根数) の推移には, 2品種間に明らかな差は認められなかった。しかし, 土壌の層別の根数には品種間差が認められ, 表層以外ではオマセコムギが新中長よりも多く, その差は下層になるに従って大きくなった。同様な差は根重についても認められた。平均根長はオマセコムギが新中長よりも長く, 根長の差が根の層別分布の差をもたらした要因の一つと考えられる。
  • 島田 信二, 広川 文彦, 宮川 敏男
    1990 年59 巻2 号 p. 257-264
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    山陽地域における水田転換畑ダイズの多収要因を明らかにするため, 同地域の主要品種であるタマホマレを用いて播種期, 栽植密度についての処理を行ない, 主として茎葉の生長と収量および収量構成要素との関係を検討した。収量および生育期間中の最高莢数, 稔実莢数は, いずれも最高LAI, m2当たり茎乾重, m2当たり総節数と高い正の相関関係が認められた。収量は最高LAIの増大に伴い, 直線的に増加し, 最高LAIが9程度で600 gm-2程度の多収が得られた。この結果から, 個体群栄養生長量の増大が莢数の増大を促し, そのことが多収に結び付いていることが判った。粒茎比は栄養生長量とは負の相関を示した。このように極めて繁茂した条件で多収が得られた原因として日照, 気温に恵まれた気象条件, 比較的肥沃で水分ストレスが少ない水田転換畑の土壌条件が推察された。また, 早播, 密植のいずれの処理も栄養生長量を増大させたが, 多収化に寄与したのは早播処理のみであった。これらのことから, 結実期間の長さも多収性に貢献していることが推察された。
  • 中西 政則, 田中 伸幸, 安藤 豊
    1990 年59 巻2 号 p. 265-269
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲に対する穂首分化期の被覆尿素追肥の影響を窒素 (N) 吸収経過, 収量の面から慣行追肥と比較検討した。1) 被覆尿素由来Nは成熟期まで水稲に吸収された。被覆尿素の水稲による利用率は約65~70%であり, 慣行追肥 (硫安) のそれは約40~60% であった。また, 被覆尿素の累積溶出量に対する利用率は, 1986, '87年の平均でみると, 穎花分化期は41%, 穂ばらみ期は54%であり, 穂揃期以降は74~80%と, 穂揃期以降の利用率の高い特徴がみられた。2) 被覆尿素区の上位葉身長, 稈長は対照区 (慣行追肥区) のそれとほぼ同じであった。これは, 被覆尿素区のN吸収が緩慢であるため, 穂首分化期の追肥でも葉身長, 稈長の伸長には余り影響しなかったためと見られた。3) 被覆尿素区の収量は対照区に比較して7~13%の増収となった。これは, 穂揃期以降も追肥Nの吸収が持続され, 葉身のN濃度が対照区より高く, 登熟歩合を高めたためと見られた。
  • 田中 典幸, 窪田 文武, 有馬 進, 田口 光浩
    1990 年59 巻2 号 p. 270-276
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    大型ポットで栽培したダイズの根長, 根重, 根径の相互関係を明かにし, ダイズ根系に関する数字モデルの作成を試みた。(1) 根の分枝, 伸長は, 生育初期段階から旺盛であり, 1個体当りの総根長は開花期には3, 500mに及んだ。また, 主根も生育に伴い肥大し, 開花期には基部直径が20 mmに達した。(2) 主根基部直径と1個体の全根重量との間には有意な相関関係が得られ, 両者は3次曲線式で示された。また, その他の諸形質についても密接な相関関係が示された。(3) ダイズ1個体の根を根径1 mmの幅で階級別 (太さ別) に分類した場合, 各階級内の合計根長と主根基部直径との関係は次式で示された。F=4.78・D3.45・X4.8, ここで, Fはある根径階級に含まれる根の合計長, Xは根径の階級値, およびDは主根基部直径を示す。ダイズの主根基部直径を測定し, 本式に代入すれば, 種々の生育段階の個体における根長と根径との関係を求めることができる。
  • 鄭 紹輝, 井之上 準
    1990 年59 巻2 号 p. 277-282
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    下胚軸伸長型のマメ科8種作物を供試し, 前報と同じ方法で, 25℃暗黒条件下で長さ3 cmに伸長した芽ばえの抽出力, 抽出力の測定 (荷重処理) 中に起こる下胚軸の伸長・肥大および芽ばえからのエチレン発生量を測定した。その結果, 芽ばえの抽出力の経時変化および最大抽出力は作物によって異なり, 抽出力が最大に達したのは測定開始15~50時間後, 最大抽出力はラッカセイの約500 gからモスビーンの約30 gまで変異した。最大抽出力と粒重 (r=0.8355**) および下胚軸の太さ (r=0.9636**) の間には正の相関関係がみられたが, 粒重1 mg当りおよび下胚軸の横断面積1 mm2当りに換算した抽出力は作物間にかなりの差異がみられた。また, 荷重処理された芽ばえでは各作物とも伸長が抑制され, 下胚軸が肥大し, エチレン発生量が増加したが, その増加程度はダイズ: アキセンゴク, インゲンマメ, ササゲ, フジマメでは大きく, ラッカセイでは小さかった。荷重処理によるエチレン発生量の増加が大きかった作物では, 芽ばえの下胚軸の肥大程度が大きく, 芽ばえが屈曲を開始した後の抽出力の増大程度も大きかった。なお, 芽ばえの抽出力の強弱は, 下胚軸の内部組織の違いや抽出力の測定中に起こる芽ばえの伸長・屈曲および肥大などと深い関係があると考えられた。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻2 号 p. 283-292
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    明治期以降の各年代において, 関東地方の基幹品種となったいくつかの品種 (以下, 1945年以前に登録されたものを旧品種群, 1950年以降に登録されたものを新品種群とする) について, 稔実期を中心に個葉光合成速度 (CER) および気孔伝導度 (gs) を比較検討し, 以下の結果を得た。(1) 出穂前においては, 新旧品種間にCERの差は認め難かった。しかし, 稔実期においては, 明らかに新品種の方が高いCERを示した。乳熟期におけるCERの新/旧比は, 3カ年, 早・中・晩品種の平均で124.4%であった。(2) 新旧品種のgsの生育のすすみに伴う推移は, CERのそれとほぼ同様で稔実期において新品種のgsは旧品種のそれに比べて高かった。また, 新品種では時刻の進みに伴うgsの低下の程度が小さいという傾向がみられた。(3) 新旧各品種を込みにして, gsとCERとの関係を検討したところ, 両者の間には多くの場合, 相関係数+0.8以上の密接な相関関係が認められ, CERの品種による変異がgsのそれによりひきおこされることが示唆された。しかしながら, この場合のgsに対するCERの回帰係数に比べ, 葉の外囲空気加湿処理をした場合のgsの増加量に対するCERの増加量の比率 (ΔCER/Δgs) の方が小さく, 前者に対する後者の割合は約70%であった。このことから, CERのgsに伴う変動のうち真にgsの差異にもとづく部分は約70%で, 他の約30%は葉肉の光合成活性のgsに並行的な変動にもとづくものと考えられた。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻2 号 p. 293-297
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稔実期にみられた水稲個葉の気孔伝導度 (gs) における新旧品種間差異の生理学的基礎を検討し, 以下の結果を得た。(1) 日没後の茎切断面からの出液速度について, 出穂期においては, 新旧品種間に系統的な差異を認め難かった。しかし, 乳熟期においては, 品種の育成年度が新しいほどこの値が大きいという傾向が明らかに認められた。(2) この時期において, 出液速度とgsとの間に多くの場合正の相関関係が認められた。これらのことから, 新品種では根の活力が高く, 葉への能動的な水分供給力が高いことが, gsを大きくしているものと推察された。(3) 通気圧 (稲体内の細胞間隙を経て地上部から地下部へ空気を通すのに必要な圧力で通気組織の発達程度の指標) に関して, 出穂開花期までは新旧品種間に差がみられなかった。しかし, 稔実期に入ると, 育成年度の新しい品種ほど通気圧が低いという傾向が時とともに顕著になった。このことから, 新品種では旧品種に比べ生育後期において地上部と地下部を結ぶ通気組織の発達がよく, 根への酸素の供給が維持され, このことが根の活力維持をもたらしていることが示唆された。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻2 号 p. 298-302
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    登録年度を異にする水稲品種多数を用いて, 稔実期に新品種が旧品種に比べて高い個葉光合成速度 (CER) を示す現象の生理学的基礎を検討した。この検討は葉における窒素含量および窒素-CER関係に着目して行った。新品種では, 稔実期において, 葉の窒素含量が旧品種に比べ高かった。さらに, 葉の全窒素含量とCERとの間にかなり密接な正の相関が存在することがみいだされた。このことから, 新品種においてCERが高い現象の基礎のひとつは, 葉身の窒素含量が高いことであると結論された。しかし, 新品種のCERは, 同じ葉身窒素レベルの下で比較しても旧品種のそれに比べ高く, このことが新品種のCERの高さのもうひとつの基礎となっていると考えられた。新品種のもつこの種の優位性は, 同じ葉の窒素レベルの下で比較しても旧品種に比べ大きなgsをもつことに帰せられることがわかった。
  • 斎藤 邦行, 下田 博之, 石原 邦
    1990 年59 巻2 号 p. 303-311
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    早生, 中生計5品種を用いて, 1985, 1986年の2ケ年にわたり収量および乾物生産特性の比較を行なった。その結果, 天候の良かった1986年の収量は, 早生品種ではアキヒカリ (568 g/m2) に比べ南京11号 (653 g/m2) が, 中生品種では日本晴 (516 g/m2) に比べむざしこがね (614 g/m2), 密陽23号 (765 g/m2) が多かった。生長解析を行なった結果, 各品種の乾物生産量の相違は早生品種では出穂期以前, 中生品種では出穂期以後の個体群生長速度の違いによっていることがわかった。幼穂発育期と登熟初期の受光態勢を比較したところ, 幼穂発育期には全品種で直立した葉身が多く, 吸光係数も小さかったが, 登熟初期には個体群上層の葉身が水平に近くなり, 吸光係数は大きくなった。幼穂発育期と登熟初期のこの相違は, アキヒカリ, 日本晴で大きかった。また, アキヒカリ, 日本晴個体群では穂による遮光の程度の著しいことも認められた。さらに, 登熟前期の株間引き処理によるアキヒカリと日本晴の純同化率の増加割合は, それぞれ南京11号とむさしこがね, 密陽23号に比べて大きく, アキヒカリと日本晴では出穂期以後受光態勢が悪くなることが確かめられた。本研究の結果から, 南京11号の乾物生産が高いのはアキヒカリに比べて出穂期以前の葉面積が大きいことにより, 密陽23号, むさしこがねの乾物生産が高いのは日本晴に比べて出穂期以後の受光態勢がよいことによることが明らかになった。
  • 山本 由徳, 久野 訓弘
    1990 年59 巻2 号 p. 312-320
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲成苗を用いて, 移植時の苗の地上部の損傷程度が植傷みと活着並びに移植後の初期生育に及ぼす影響について検討した。1) 苗の葉身では100%, 葉鞘を含めた地上部では50% (乾物重%) 程度まで剪除しても移植直後の出葉速度は対照 (無処理) 区にくらべて低下せず, 植傷みへの地上部剪除の影響は比較的小さかった。これには, 苗の葉身の剪除割合に応じて移植直後の葉身への乾物分配率が高くなったことが密接に関係していた。しかし, 根への乾物分配率は地上部の剪除程度に応じて低下して, 発根が劣り初期生育も劣った。この結果は, 苗の剪根程度に応じて移植直後の出葉速度は低下し, 植傷みは大きくなったが, 発根や活着, さらには初期生育への影響は比較的小さくなった結果と対照的であった。従って, 損傷部位を異にする苗の移植直後の出葉速度と発根, さらには活着および初期生育の良否との間には明瞭な対応関係は認められなかった。また, 全葉身と全根を剪除した苗では, 根のみあるいは葉身のみを剪除した苗にくらべて, それぞれ移植直後の出葉速度の低下および発根の抑制が軽減された。2) 移植後の苗の発根, 活着および初期生育の良否は, 移植直後の苗地上部の炭水化物 (全糖+澱粉) 含有率と密接な関係を示し, 炭水化物含有率の高い苗ほど発根, 活着が良好で初期生育が優った。このことから, 苗の地上部剪除に伴う活着不良および初期生育の抑制は, 剪除程度に応じて移植直後の苗地上部の炭水化物含有率が低下したためと考えられた。
  • 石原 邦, 清田 悦子, 今泉 信之
    1990 年59 巻2 号 p. 321-326
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種日本晴を用いて, 止葉と比較しつつ穂の蒸散, 光合成の特徴を明らかにすることを試みた。穂の蒸散速度は出穂日が最大で, 明所と暗所との拡散伝導度の相違は著しく小さかった。また明所と暗所の穂の蒸散速度は共に飽差の増加に伴って直線的に増加し, 両直線の傾きは等しかった。これに対して, 止葉の暗所の拡散伝導度は明所の約10分の1であり, 飽差の増加に伴う暗所の止葉の蒸散速度の傾きは明所の約10分の1であった。なお, 暗所の止葉の拡散伝導度は穂の約2分の1であった。穂のみかけの光合成速度, 暗呼吸速度はそれぞれ出穂日後5日, 10~15日に最大に達し, 総光合成速度は最大約6 mgdm-2hr-1で, 止葉の約6分の1であった。暗呼吸速度はみがけの光合成速度とほぼ等しく, 止葉に比較して高かった。飽差の増加に伴って, 止葉では拡散伝導度, 光合成速度が減少するのに対して, 穂では両者ともに変化せず飽差の影響をうけなかった。以上の結果と穂の形態についての従来の研究結果とから, 穂の蒸散, 光合成には気孔がほとんど関与していないことが明らかになった。穂軸及び枝梗と籾とに分けて測定した光合成速度と明暗の蒸散速度とから, この穂の特徴は籾の蒸散, 光合成の性質によってもたらされたことを認めた。
  • 高橋 肇, 千田 圭一, 中世古 公男
    1990 年59 巻2 号 p. 327-333
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    春播コムギ3品種 (長稈ハルヒカリ, 半矮性ハルユタカおよび長稈・晩生Selpek) の主稈3部位 (穂首節間, 第2節間および下位節間) における構成物質 (細胞壁構成物質, 純細胞内容物質および可溶性糖) の推移を開花期から成熟期まで調査した。開花後, 細胞壁構成物質と純細胞内容物質は穂首節間と第2節間で伸長生長に伴い増加したものの, 開花時に伸長の停止している下位節間ではほとんど増加しなかった (第2図) 。これに対し, 貯蔵物質と考えられている糖は, 各節間とも乳熟期まで増加した後穂への転流とともに減少し, 成熟期にはほぼ0の値を示した。糖は, 下位節間では開花前にかなりの量が蓄積していたのに対し, 穂首節間と第2節間では開花期に蓄積し始め, 下位節間では乳熟期の1週間ほど前に, 第2節間では乳熟期に, 穂首節間では乳熟期の数日後に最大値に達した。乳熟期の糖の含有率は全品種とも第2節間で高く, さらに含有量は下位節間で高いため, 第2節間と下位節間が主要な貯蔵器官であると考えられた。一方, 糖の含有率, 含有量ともに半矮性のハルユタカで長稈のハルヒカリ, Selpekよりも高かった。
  • 田中 尚道, 西川 欣一, 秋田 謙司
    1990 年59 巻2 号 p. 334-339
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲苗の発根力と苗の素質並びにアミラーゼ活性との関係を明らかにするために, 水稲品種日本晴を用い, 異なる10種類の育苗条件下で苗を栽培し, 苗の素質と発根力及びアミラーゼ活性との関係を播種後14日目及び28日目の苗について解析した。苗の発根力から判断すると, 14日苗では薄播区, 高温区の苗の素質は良く, 畑区, 1/2N区, 2/2N区, 3/2N区及び低温区の苗は標準区と同様の素質であったが, 厚播区, 湛水区及び遮光区の素質は劣った。一方, 28日苗では薄播区, 畑区, 低温区及び3/2 N区標準区に比べ苗の素質は良く, 厚播区, 湛水区, 高温区及び1/2N区の素質は劣り, 遮光区の苗の素質は著しく劣った。発根力と苗の諸形質との関係は, 14日苗では葉令, 草丈, 葉鞘の太さ, 葉身重, 根重及びアミラーゼ活性との間に有意な正の相関関係が認められた。一方, 28日苗では発根力と窒素含有率及びアミラーゼ活性との間に正の相関関係が認められたが, 形態的特性との間には関係はみられなかった。また, どの生育段階においても苗の発根力とアミラーゼ活性との間には極めて密接な関係がみられ, 発根力試験におけるアミラーゼ活性の高い苗ほど素質はよいものと思われた。
  • 何 光存, 木暮 秩, 鈴木 裕
    1990 年59 巻2 号 p. 340-345
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稲の登熟期の前期と後期に温度を変えて, 米粒の外部と内部デンプンの理化学性質に如何に影響するかを検討した。米粒の内部デンプンは登熟前期, 外部デンプンは登熟後期の温度に影響されることが分かった。ヨウ素呈色法とヨウ素親和力で測定したデンプンのアミロース含量は登熟期の温度により変わり, 低温で登熟した米デンプンのアミロース含量が高かったが, 高温で登熟した米デンプンは低い値を示した。外部デンプンのアミロース含量は内部より低く, 登熟後期の温度の影響が大きかった。ミニビスコグラフィで得られたアミログラフィ特性値には, 高温で登熟したデンプンは低温で登熟したデンプンより粘度上昇温度が低く, 粘度値が高く, ブレークダウンが大きかった。外部デンプンは内部デンプンより低い粘度上昇温度と高い最高粘度を示した。DSC (示差走査熱量測定) によるデンプンの糊化吸熱特性は, 高温で登熟したデンプンの転換温度点と糊化吸熱量が低温で登熟したデンプンより全般的に高かった。またDSC特性は内部デンプンで登熟前期の温度, 外部デンプンで後期の温度に影響された。脂質含量については, 内部デンプンの方が登熟前期の高温により増加, 外部デンプンの方が後期の高温により減少した。脂肪酸の組成も登熟温度により変化した。
  • 久留戸 涼子, 遠山 益
    1990 年59 巻2 号 p. 346-353
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ハクランの葉肉プロトプラストを用いて, その培養過程における葉緑体の脱分化を研究した。カイネチン0.5 mg/l及び2, 4-D 3mg/lを含むMS培地では細胞分裂が高頻度で見られ, 細胞活性もよく保たれたので, これを本実験の脱分化系培地とした。また, 前記の培地でカイネチンを含まない培地では細胞分裂がほとんど起こらず細胞が老化したので, これを老化系培地とし, 培養過程における両系の生理的な経時変化を追った。クロロフィル含量は両系共に減少し, 可溶性タンパク質については, 老化系では細胞全体と葉緑体とで共に減少し, 脱分化系では細胞全体では分裂にともなって増加するが, 葉緑体では減少する傾向がみられた。RNase活性は, 脱分化系では培養日数と共に増加し, 老化系では一度増加した後減少した。細胞全体と葉緑体とのRNaseの活性の増減は, 互いに平行関係にあったが, 全体に占める葉緑体のRNase 活性の割合は, 培養日数と共に減少した。SDS-PAGEにより葉緑体タンパク質の各成分の変化を分析すると, 両系共どのタンパク質成分も減少した。しかし, 老化系の培養7日後では, ほとんどのタンパク質が分解したのに対し, 脱分化系ではRuBPCaseやCF1のタンパク質が明らかに同定できた。プロテアーゼ活性は, 両系共に増加する傾向にあったが, 葉緑体を含まない分画での割合が高かった。
  • プレマチャンドラ ニャーナシリS., 実岡 寛文, 松浦 秀明, 尾形 昭逸
    1990 年59 巻2 号 p. 354-358
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    窒素施与量を150, 250および350 kg/ha (それぞれ少, 中, 多窒素区とする。) の3段階に変えた圃場条件下でトウモロコシ (品種P 3358) を栽培し, 播種後70日目に展開完了最上位葉についてポリエチレングリコール法による葉の細胞膜安定性, 葉の水ポテンシャル, 浸透ポテンシャルおよび細胞液中の溶質濃度を測定し, 葉の水分状態と細胞膜安定性に及ぼす窒素施与の影響を明らかにした。地上部新鮮重は窒素施与に伴い増加し, 少窒素区に対する多窒素区のそれの増加率は約4.1倍であった。3処理区の葉の水ポテンシャルは少>中>多窒素区の順に低く, 多窒素区ほど葉の水ポテンシャルの低下は大きかった。しかし, 水ストレスに対する葉の細胞膜安定性は, 逆に多窒素区ほど高かった。多窒素区の葉の浸透ポテンシャルは, 中および少窒素区に比べて低かったが, 膨圧は逆に少窒素区に比べて多窒素区で著しく高かった。窒素施与量の増加にともない葉細胞液中のカリ, カルシウム, リン, 窒素, アルコール可溶糖さらには遊離アミノ酸濃度が著しく増加した。以上の結果, 多窒素区では少窒素区に比べて葉の水ポテンシャルが低下したにもかかわらず, 地上部新鮮重および細胞膜安定性の増加が認められ, その主たる要因として糖, カリ, 窒素の集積による葉の浸透調整力の増大にともない, 葉の膨圧が高く維持されるためと考えられる。
  • 樋口 暢宏, 前田 英三
    1990 年59 巻2 号 p. 359-368
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アブシジン酸 (ABA) を前培養の段階で与えると, イネカルスに次に挙げるような変化が起こることがわかった。まず第一にカルス生長に対して阻害作用が認められ, それは特に高濃度 (2×10-4 M) のABAの場合に, 顕著であった。第二に, 処理したカルスが白色及びコンパクトな乾燥状態になった。第三に, 処理カルスを走査電子顕微鏡 (SENI) レベルで観察したところ2種類の構造, つまり比較的滑面のこぶ状の構造と, カルス表面上にあった膜構造が破壊されつつあると思われる構造が認められた。さらに, ABA処理を暗条件で与えると, 第二に示した白色構造の出現頻度が上昇した。またABA処理したカルス塊をその形態的特徴から選別して, 再分化培地に移植すると, ABAを前培養時に処理した際に生じた白色部位が非常に高い再分化能力を有していることも明らかになった。しかしABA処理時の光条件は, 白色部位の形成頻度には影響を及ぼすが, 植物体再分化能力の点からみた白色部位自体の性質には変化を及ぼさなかった。実験で得られたカルス塊の中で最も高い再分化率を示したABAを処理した際に生じた白色部位カルスを, 再分化培地に移植してから7日目の状態をSEM観察したところ, 通常の器官形成パターンによる再分化が多く確認されたが, それとは別の分化パターンも観察された。しかしこれが体細胞胚発生によるものであるかどうかは不明である。
  • 三本 弘乗, 服部 三信, 中條 博良
    1990 年59 巻2 号 p. 369-376
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の主茎および分げつ間における窒素の移動を明らかにするため, 主茎の第4葉着生節より発生した1次分げつ (T4) の根群に15Nを施用して, 主茎およびT4を含む各分げつにおける15Nの含有率と分配率の推移を調査した。T4の根群が吸収した15Nの分配の多い順位の傾向は次のとおりとなった。すなわち, T4から発生した2次分げつ (T41, T44) > T4自身 > > 主茎 > T4より上位の節から発生した1次分げづ (T5, T7) > T4より下位の節から発生した1次分げつ上の2次分げつ (T31, T34) > T4より下位の節から発生した1次分げづ (T3) の順位となった。T4上の2次分げつへの分配は多いが, T4より下位の節から発生した1次分げつ並びにそれの2次分げつへの分配が著しく少ないことが明らかにされたので, 水稲では, 上位の節の分げつから, それより下位の節の分げつへの窒素の転流は, 極めて少ないと推察された。
  • ナカムラ チエミ, 前田 英三
    1990 年59 巻2 号 p. 377-383
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    コーヒー葉カルスの生長・発育に伴う表面の微細構造変化を, 走査電子顕微鏡を用いて研究した。培養2週間後, カルスは主に葉の切断面から発生した。約45日後には, 形成されたカルスは多くの糸状構造物の集合のような柔らかな組織となった。走査電子顕微鏡観察により, カルスは維管束近くの葉肉細胞から生じることを認めた。カルスの生長に伴い表面をおおっている膜状構造が部分的に破れ, 表層細胞がその破れた膜状構造の下から現われた。更に興味ある形態として, 球形細胞・伸長細胞・長く伸びて曲った細胞などの存在を認めた。
  • 徐 会連, 石井 龍一
    1990 年59 巻2 号 p. 384-389
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物体各部分における光合成での耐乾性の違いのメカニズムを知るために, 異なる土壌水分レベルの下での植物体各部分の水ポテンシャル (WP), 浸透ポテンシャル (OP), 圧ポテンシャル (TP) 及び相対含水率 (RWC) を調査した。各部分とも土壌水分欠乏が進むにつれてOPが低下し, 全ての部分で浸透調整が起こっていることが示されたが, OPの低下程度も, OPの低下によって生ずるTPとRWCの保持程度も部分によって異なっていた。すなわち, TPもRWCも, ある一定の水ポテンシャルのもとで比較すると, 上位葉身が下位葉身より高く, 茎と止葉葉鞘は止葉葉身とほぼ同じ傾向を示した。つまり, この順序で, 組織内の水分状態は好適に保たれていることがわかった。しかし, 穂は他の部分とは極めて異なる傾向を示し, TPは葉身, 茎, 葉鞘より低いにもかかわらず, RWCはこれらよりも高かった。このことはOPの低下に伴って起こるTPとRWCの保持機構が穂と他の部分とで異なっていることを示唆する。そこで, OP低下の原因をWrightらが提唱した濃縮効果と溶質蓄積効果とに分けて解析したところ, 穂では他の部分に比べて濃縮効果が小さく, 組織内の水分が出にくいことがわかり, このことが穂のRWCを高く保持する原因と考えられた。葉位別に比較すると, 上位葉は下位葉より濃縮効果が低く, 溶質蓄積効果が高いこともわかった。さらに穂が上述の特性を示す理由を調べるために, 穎と粒とに分けて水分関係に関わるパラメータを測定した結果, 粒の存在がその理由になっていることが示唆された。
  • 後藤 寛治
    1990 年59 巻2 号 p. 390-394
    発行日: 1990/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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