抄録
水稲苗の発根力と苗の素質並びにアミラーゼ活性との関係を明らかにするために, 水稲品種日本晴を用い, 異なる10種類の育苗条件下で苗を栽培し, 苗の素質と発根力及びアミラーゼ活性との関係を播種後14日目及び28日目の苗について解析した。苗の発根力から判断すると, 14日苗では薄播区, 高温区の苗の素質は良く, 畑区, 1/2N区, 2/2N区, 3/2N区及び低温区の苗は標準区と同様の素質であったが, 厚播区, 湛水区及び遮光区の素質は劣った。一方, 28日苗では薄播区, 畑区, 低温区及び3/2 N区標準区に比べ苗の素質は良く, 厚播区, 湛水区, 高温区及び1/2N区の素質は劣り, 遮光区の苗の素質は著しく劣った。発根力と苗の諸形質との関係は, 14日苗では葉令, 草丈, 葉鞘の太さ, 葉身重, 根重及びアミラーゼ活性との間に有意な正の相関関係が認められた。一方, 28日苗では発根力と窒素含有率及びアミラーゼ活性との間に正の相関関係が認められたが, 形態的特性との間には関係はみられなかった。また, どの生育段階においても苗の発根力とアミラーゼ活性との間には極めて密接な関係がみられ, 発根力試験におけるアミラーゼ活性の高い苗ほど素質はよいものと思われた。