抄録
稲の登熟期の前期と後期に温度を変えて, 米粒の外部と内部デンプンの理化学性質に如何に影響するかを検討した。米粒の内部デンプンは登熟前期, 外部デンプンは登熟後期の温度に影響されることが分かった。ヨウ素呈色法とヨウ素親和力で測定したデンプンのアミロース含量は登熟期の温度により変わり, 低温で登熟した米デンプンのアミロース含量が高かったが, 高温で登熟した米デンプンは低い値を示した。外部デンプンのアミロース含量は内部より低く, 登熟後期の温度の影響が大きかった。ミニビスコグラフィで得られたアミログラフィ特性値には, 高温で登熟したデンプンは低温で登熟したデンプンより粘度上昇温度が低く, 粘度値が高く, ブレークダウンが大きかった。外部デンプンは内部デンプンより低い粘度上昇温度と高い最高粘度を示した。DSC (示差走査熱量測定) によるデンプンの糊化吸熱特性は, 高温で登熟したデンプンの転換温度点と糊化吸熱量が低温で登熟したデンプンより全般的に高かった。またDSC特性は内部デンプンで登熟前期の温度, 外部デンプンで後期の温度に影響された。脂質含量については, 内部デンプンの方が登熟前期の高温により増加, 外部デンプンの方が後期の高温により減少した。脂肪酸の組成も登熟温度により変化した。