日本作物学会紀事
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ネピアグラスの乾物生産に関する研究 : 第6報 植物生長抑制剤パクロプトラゾール処理が地上部の生長と乾物収量に及ぼす影響
伊藤 浩司石井 康之三角 守岩切 弘明
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1990 年 59 巻 3 号 p. 469-474

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抄録

植物生長仰制剤を利用してネピアグラス (Pennisetum purpureum Schum., 品種 Merkeron) の粗飼料としての品質を改善する可能性を検討する目的で, 栄養生長期における地上部の伸長生長, 乾物収量及び収量の葉身/稈比などに及ぼす抑制剤処理の影響を調べた。処理として, パクロブトラゾールの0.538%水溶液を植物体の草高が約1 mに達した時期に地上部全面に散布した。処理によって, 処理当時の最上位展開葉より上位数枚の葉の葉身長及び葉鞘長は短く, 葉巾は大きくなり, 節間長は約10要素にわたり短くなった。無処理区の草高が約3.3 mに達したとき, 処理区の草高は無処理区の約1/2であったが, 茎数は逆に約2倍であった。無処理区の地上部全乾物収量が10~20 t ha-1のとき, 無処理区に対する処理区の乾物収量の比は, 葉身:1.262, 葉鞘を含む稈:0.712, 枯死部:1.274, 地上部全体:0.940であった。このように, 本実験の処理濃度では, 処理によって茎の伸長が抑制されるに伴って, 乾物生産性は低下し, 粗飼料生産上は不利となった。しかしこの不利は, 収量の葉身/稈比の面での粗飼料としての品質の向上によって少なくとも部分的には補償された。

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