日本作物学会紀事
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59 巻, 3 号
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  • 飯田 周治, 新村 善男, 上森 晃, 久津那 浩三
    1990 年 59 巻 3 号 p. 413-418
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    一般の圃場での生育中期の水管理の方法が水稲の生育収量に及ぼす影響を明らかにするため, 壌土質乾田を用い, 土壌改良資材, 肥料, 稲わら等を適切に施用して, 分けつ終期から減数分裂期までの間の排水方法を変えることによって, 土壌への影響, 水稲の生育, 収量品質に及ぼす影響を調べた。試験区1は分けつ終期, 穂首分化期, 減数分裂期前期の3回にわたって数日間潅水を止めて排水をする区, 試験区2は穂首分化期と減数分裂期前期の2回同様の排水をする区, 試験区3は減数分裂期前期のみの同様の排水をする区を設け, ほぼ同じ内容で3年間試験を継続した。排水が土壌の酸化還元電位や減水深に及ぼす影響では, 試験区1の場合が+300 mV附近の最も高い酸化状態に達し, 湛水後も高い酸化状態が長く継続した。土壌の減水深も同様に試験区1の場合が48~60 mm/日と最も多かった。排水の差による分けつの発生, 稲体の生育, 稲体の窒素含量に及ぼす影響はほとんど認められなかった。収穫時の生葉数や枝梗の生存率に及ぼす影響は試験区1が良好であった。根系に及ぼす影響も同様に試験区1が大部分褐色の健全根で良好であった。収量品質面への影響では, 玄米重, 籾重は試験区1が常に優れ, 稲わら施用の場合特に玄米重への影響について有意差が認められた。立毛中の胴割粒の発生は試験区1が最も少なかった。
  • 大西 政夫, 堀江 武
    1990 年 59 巻 3 号 p. 419-425
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稲作と畜産の有機的結合を図る一手段として, 水稲を生育途中で一度青刈し, 飼料として利用するとともに再生稲から高い子実生産を得るための栽培・管理法を明らかにする目的で, 日本晴を供試し, 作期および青刈りの時期と高さが青刈り稲並びに再生稲の玄米, ワラの収量とそれらの飼料成分に及ぼす影響を調べた。青刈り時期が遅くなるほど青刈り稲の収量は直線的に増加したが, 玄米およびワラ収量は逆に直線的に減少した。さらに青刈り時期の遅延とともに, 青刈り稲の粗たん白質含有率は顕著に低下し, 粗脂肪含有率も低下する傾向にあった。このように青刈り時期は青刈り稲と再生稲の収量に拮抗的に影響するが, 両者をこみにした総合粗たん白質と総合粗脂肪収量は出穂前40~30日頃の青刈りで最大となり, さらにこの時期に刈取った青刈り稲の粗たん白質, 粗脂肪含有率はイネ科牧草のそれらの平均含有率よりも高かった。5cm刈りは10 cm刈りよりも青刈り稲収量は高いが, その飼料価値は低く, また再生稲の収量を低める傾向にあった。さらに, 早植えによって低刈りによる再生稲の減収割合が小さくなり, 青刈り稲の飼料価値も高まった。以上より, 日本晴を標準的な施肥条件下で, 青刈り実取り栽培を行う場合, 早植えし, 出穂前40~30日の地上10 cmでの青刈りが総合養分生産性並びに飼料価値の面で最適と考えられる。この場合, 飼料成分的にみて, 一般の牧草より優れた青刈り稲を約1.5 t/ha収穫できるとともに, 再生稲から無刈取りの70~90%の子実生産が期待できることがわかった。
  • 江原 宏, 土屋 幹夫, 小合 龍夫
    1990 年 59 巻 3 号 p. 426-434
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ幼苗期における生長速度の品種間差異と, それに関わる要因を明確にするため, インド型, 日本型の, 耐肥性, 草型および生育日数の異なるイネ35品種を, 7段階の培養液濃度下で第2葉抽出時から8.5葉期まで (30日間) 水耕栽培し, 生長解析を行うとともに, 実験終了時に, 葉身の全窒素, 全炭素含有率およびクロロフィル含量を測定した。その結果, 幼苗期における生長速度には培養液濃度が異なっても大小関係が変わらない品種間差異があり, その差異は, 乾物増加量 (ΔW) で9倍, RGR, NAR, LAR, SLAおよび葉面積当り窒素含有量で2~3倍と大きく, 比較的低濃度域で大きいことが明確になった。また, 乾物当り炭素含有量は, 品種および培養液濃度に拘らず一定であり, したがって, 葉面積当り炭素含有量はSLAによって一義的に規定されていることが明らかになった。他方, 生長速度の品種間差異に係わる主要な要因としては, 乾物重当りではなく葉面積当りの窒素含有量 (NCLA) が指摘でき, 低培養液濃度条件においても, また, 高培養液濃度条件によってSLAが増大する状況においても, NCLAを高く維持できる性質がNARを高く維持することにつながり, このことが生長速度が大きい品種群のもつ重要な特性となっていることを明確にした。また, この特性とインド型, 日本型の別, および耐肥性程度, 草型等との間には一定の対応関係が無いことを明らかにした。本論文では, これらの結果に基づいて, 生長パラメーターとしてのNCLAの重要性について論及した。
  • 土屋 幹夫, 江原 宏, 小合 龍夫
    1990 年 59 巻 3 号 p. 435-442
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ幼苗の対肥料反応の品種間差異と, それに係わる主要な形質および少肥向き, 多肥向き品種の具備すべき形質を明確にするため, インド型, 日本型のイネ35品種を用い, 培養液濃度に対する各生長パラメーターの変化および葉身の乾物重当り窒素含有量 (NCLW), 葉面積当り窒素含有量 (NCLA) の変化を検討した。その結果, 相対生長率 (RGR) の変化からみたイネ幼苗の対肥料反応は, 少なくとも6.5葉期以降の生育段階に達しないと明確に現れないこと, 培養液濃度に対するRGRの変化には4つの型が認められること, そして, 各RGRの対肥料反応型は, 培養液濃度に対する比葉面積 (SLA) とNCLAの変化を基礎として成立していることが明らかになった。また, SLAとNCLAの変化は極めて密接に関連しており, SLAの培養液濃度に対する変化がNCLA の変化を規制し, 両者の変化において表される品種の反応にし, 4つの典型的な型が認められることが明確になった。一方, NCLWの培養液濃度に対する変化にも品種間差が認められ, 3つの型に分けられた。RGR, SLA, NCLAおよびNCLWの変化型に基づいた供試品種の分類から, 栄養生長期の生育における少肥向き品種の有すべき形質としては, インド型品種の中に一部認められたような低濃度におけるNCLW, NCLAがともに高い性質が, また, 多肥向き品種の形質としては, 多くの日本型品種に認められたような, 高濃度域においてもSLAが著しく増大せず, RGRが高くて比較的安定している性質が, それぞれ重要と考えられた。
  • 石橋 英二, 桐山 隆, 田村 良文, 金野 隆光, 小野 祐幸
    1990 年 59 巻 3 号 p. 443-449
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    岡山県南部の主要品種 (日本晴, アケボノ) について, 移植期~幼穂形成期と幼穂形成期~出穂期の温度影響評価と幼穂形成期および山穂期の予測を行った。その際, 竹澤らが, 堀江らの概念に基づいて提案した方法, つまりノンパラメトリック回帰を用いてDVRを決定する方法 (以下, ノンパラメトリックDVR法と称する) を用いて解析した。また, 予測精度を有効積算温度法と比較した。さらに岡山県と石川県で得た生育期毎の発育速度と温度の関係 (DVR-T曲線) を比較した。1. DVR-T曲線は, 生育ステージによって特徴的な形状を示し, 移植期から幼穂形成期では, 湾曲していたが, 幼穂形成期から出穂期では直線状となった。2. Cross-validationを併用したノンパラメトリックDVR法で幼穂形成期あるいは出穂期を予測した結果, 予測日と観測日の差は最大2~3日であった。3. ノンパラメトリックDVR法と有効積算温度法を比較した結果, DVR-T曲線が直線の場合には, ノンパラメトリックDVR法と有効積算温度法の予測精度は同程度であったが, DVR-T曲線が湾曲する場合には, ノンパラメトリックDVR法の予測精度が勝っていた。4.石川, 岡山両県で得たDVR-T曲線の比較から, 移植期~幼穂形成期では, 発育速度は20℃以上で頭打ちになるが, 幼穂形成期~出穂期では気温が高いほど, 発育が早まり, 温度反応が鋭敏であることがうかがえた。
  • 由田 宏一, 佐藤 久泰
    1990 年 59 巻 3 号 p. 450-454
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アズキの品質改良に関する基礎資料を得るために, 品質関連形質の変異とその成因を解析する研究の一環として, 北海道各地の生産者から収集した材料 (品種エリモショウズ, 1987年240点および1988年203点) について, 平均粒大および粒大変異 (1点300粒におけるI粒重の平均値および変異係数) を調査し, 年次間, 地域間, 生産者間の差異を検討した。平均粒大には明瞭な地域間差異が認められ, 生殖生長期間の長い十勝 (平均64日) で最も大きく, 石狩, 空知 (同49, 45日) では十勝産の約75%にとどまった。また, 同一地域内においても生産者によっては約2倍に達する平均粒大の差異がみられた。平均粒大と窒素施肥量との間には, 弱いながら正の相関関係 (r=0.300**) が得られた。粒大変異は生産者間で14%から37%まで分布し, 20~25%を示すものが最も多く, 年次間および地域間差異は小さかった。平均粒大が小さいと粒大変異が大きくなる傾向が, 全域を通して, また地域内でもみられた。アズキの品質関連形質のひとつである粒大の変異に関する実態は, 普通畑と転換畑の違いを含め, 地域により適応した品種の導入・育或が望まれることと, 栽培技術の再点検と改善が必要なことを示している。
  • 鬼頭 誠, 吉田 重方
    1990 年 59 巻 3 号 p. 455-460
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    深根性マメ科植物であるアルファルファの生育, 根粒着生および窒素固定能に及ぼす地下水位の影響をポット試験を用いて調査し, さらに土壌気相の酸素濃度との関係を検討した。1) 播種したアルファルファの生育は, 地上部, 地下部とも地下水位が10 cmより高い場合に抑制された。根粒着生や窒素固定能および茎葉部全窒素量は地下水位20 cmの場合でも抑制され, 地下水位の上昇が植物生育よりも窒素固定系に強く抑制的に働くことが明らかとなった。2) 再生植物体に対して地下水位の上昇 (水位10 cm) は再生途中のアルファルファの窒素固定能に顕著な影響を及ぼし, その期間が短時間 (1日) の場合には回復可能であるが, 長期間 (3~5日) の場合には回復不可能であること, および再生植物体の生育, 窒素固定が顕著に低下することを認めた。3) アルファルファの根粒着生, 窒素同定能および単位根粒重当たりの窒素固定能が溶存酸素濃度の低い条件下で顕著に低下することを水耕栽培によって認め, さらに, アルファルファの根粒着生切断根を用いた試験によって単位根粒重当たりの窒素固定能も酸素濃度の低下によって顕著に阻害されることを確かめた。
  • 中條 博良, 羽生 幸夫
    1990 年 59 巻 3 号 p. 461-468
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    チーゼルに関する基礎的知見を得る目的で, 生育特性, 特に分枝および開花の特性を現在わが国において栽培されている系統を用いて検討した。発芽最適温度は24~28℃であった。3月下旬から1か月毎に播種した場合, 3月下旬~6月下旬の播種では生育および開花に差がほとんど認められなかった。抽だい・開花率は6月下旬までの播種では100%であったが, 7月下旬および8月下旬の播種では著しく低下し, 9月下旬以後の播種では0%であった。第一次分枝は主茎の上位4~7節に対生し, 第一次分枝から第二次分枝が, さらに第三次, 第四次分枝が対生し, これらの分枝の先端にはそれぞれ1個の頭花が着生した。ただし, 第二次以上の分枝のなかには, 伸長しないもの, および伸長しても頭花が中途で発育を停止するものがあった。1個体の開花頭花数は60~100個であった。これらの頭花の開花始は, 主茎が最も早く, 着生分枝が高次になるに従って遅くなり, 主茎頭花と最も遅かった頭花との差は約40日であった。頭花の分化は, 主茎頭花では2月上旬の花芽分化に始まり, 総苞分化, 苞の分化, 伸長, 湾曲を経て6月上旬の開花に至った。第一次分枝のうちの上位第1~第4の8分枝を残して主茎および他の分枝を摘除すると, 残された分枝における開花および頭花の大きさが比較的よく揃った。
  • 伊藤 浩司, 石井 康之, 三角 守, 岩切 弘明
    1990 年 59 巻 3 号 p. 469-474
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物生長仰制剤を利用してネピアグラス (Pennisetum purpureum Schum., 品種 Merkeron) の粗飼料としての品質を改善する可能性を検討する目的で, 栄養生長期における地上部の伸長生長, 乾物収量及び収量の葉身/稈比などに及ぼす抑制剤処理の影響を調べた。処理として, パクロブトラゾールの0.538%水溶液を植物体の草高が約1 mに達した時期に地上部全面に散布した。処理によって, 処理当時の最上位展開葉より上位数枚の葉の葉身長及び葉鞘長は短く, 葉巾は大きくなり, 節間長は約10要素にわたり短くなった。無処理区の草高が約3.3 mに達したとき, 処理区の草高は無処理区の約1/2であったが, 茎数は逆に約2倍であった。無処理区の地上部全乾物収量が10~20 t ha-1のとき, 無処理区に対する処理区の乾物収量の比は, 葉身:1.262, 葉鞘を含む稈:0.712, 枯死部:1.274, 地上部全体:0.940であった。このように, 本実験の処理濃度では, 処理によって茎の伸長が抑制されるに伴って, 乾物生産性は低下し, 粗飼料生産上は不利となった。しかしこの不利は, 収量の葉身/稈比の面での粗飼料としての品質の向上によって少なくとも部分的には補償された。
  • 陳 日斗, 井之上 準, NG Nyat Quat
    1990 年 59 巻 3 号 p. 475-480
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アフリカ稲 (Oryza glaberrima Steud.) の浮稲30品種, 普通稲12品種を用い, 収穫適期における脱粒難易強度 (籾と小枝梗の間の抗張強度と抗曲強度) を測定するとともに, 籾離脱部位の解剖形態的特性について調査した。その結果, 浮稲は普通稲より脱粒性が強く, 抗張強度と抗曲強度の相互関係を表す回帰式は, 両稲間で異なることがみられた。しかしながら, 浮稲, 普通稲ともに大部分の品種の籾離脱部位にはアジア稲にみられるのと同じような離層が形成されており, その離層は収穫期までにほぼ完全に崩壊したが, 一部の品種では離層の形成が不完全であった。後者はアジア稲にはみられないタイプの離層で, このような離層を有する品種では抗張強度および抗曲強度が強くsupporting zone (支持帯) の直径や厚壁組織の厚さも大きかった。ところが, 日本の水稲品種の一部にみられるような離層の形成が認められない品種は, アフリカ稲には見出されなかった。なお, アフリカ稲では浮稲, 普通稲ともに抗張強度と抗曲強度は離層が崩壊した部位に残るsupporting zoneの直径や厚壁組織の厚さとの間に, それぞれ0.1%水準で高い正の相関関係がみられた。以上の結果から, アフリカ稲の浮稲が脱粒し易い原因は, 完全な離層を有する品種が多く, supporting zoneの直径や厚壁組織の厚さなどが小さいためであろうと考えられた。
  • 津野 幸人, 山口 武視, 牛見 哲也
    1990 年 59 巻 3 号 p. 481-493
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    鉢栽培した登熟期の水稲につき, 夜温の高低, 穂首よりアミノ酸類の供給, 穂部のみを高温におくなどの処理で米粒の肥大抑制を行った。1. 全登熟期を通して, 生籾体積と生籾粒重との間には密接な相関関係が成立 (r=0.968**) し, さらに, 穂揃後17日頃の生籾重と収穫時の乾燥粒重との間にも同様の関係を認めた (r=0.884**)。以上より, 成熟粒軽重の傾向は登熟前半で決まるので, 登熟前半の粒重決定にあずかる要因の解析に力点をおいた。2. 高温あるいは低夜温処理は共に穂揃後29日までの粒重増加を抑制した。この抑制の原因は, 光合成量および呼吸量の差からは説明できない。また, 粒重増加が抑制された区では, 稈・葉鞘中に移動可能な炭水化物がより多く蓄積された。したがって穂に分配される炭水化物の不足でもって, 粒重増加の差を説明できない。温度が穂部の炭水化物収容能力に影響を与えるとの想定にたって, 穂部のみを高温条件におくと, 無処理穂よりも粒重は軽くなった。アミノ酸類を穂首より与えた処理は水を与えたものに比しすべて粒重が軽くなったが, 統計的に有意差を認めたのは, アスパラギン, KNO3供給であった。3. 上述した処理で, 玄米中のアンモニア濃度と粒重との関係を見ると, 粒重増加の抑制程度に応じてアンモニア濃度が増加した。さらに玄米中のアンモニア濃度と糖濃度との間に高い正の相関のある (r=0.937**) ことより, 生理毒であるアンモニアがデンプン合成に抑制的に作用する可能性, ならびに玄米のアンモニア濃度は, アミノ酸類合計値と高い正の相関を持つことより, 登熟不良は窒素代謝の不調に影響されるとの2点を推論した。
  • 田中 尚道, 西川 欣一, 秋田 謙司
    1990 年 59 巻 3 号 p. 494-497
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種IR24号 (インド型), 水原258号 (日印交雑種) 及び日本晴 (日本型) を用いて, 播種後20日目 (葉齢約4.0) の葉鞘におけるα-アミラーゼ活性と澱粉含量の日変化について調査し, 以下のような結果を得た。1. α-アミラーゼ活性の日変化はいずれの品種も午前6時から午後6時 (昼間) に比べて午後6時から午前6時 (夜間) の方が高かった。特にα-アミラーゼ活性の高い時刻は3品種とも, 午前4時から午前6時の間で, その後いずれの品種も午前7時から午前9時にかけて著しく低下する傾向がみられた。2. 品種間でみると, α-アミラーゼ活性はIR24号が最も高く推移し, 水原258号でもほぼ同様の活性を示したが, 日本晴はIR 24号の約30%の低い活性で推移した。3. 澱粉含量の日変化は, いずれの品種もα-アミラーゼ活性とは逆に午前6時から午後6時 (昼間) の方が午後6時から午前6時 (夜間) より含量は高かった。4. 品種間でみると, 澱粉含量の最も多かったのは水原258号で, IR24号もほぼ同様の値で推移した。一方, 日本晴は両品種に比べて澱粉含量は低く推移した。これは, 品種特性 (耐肥性) の違いによるものではないかと思われた。
  • 長谷川 博
    1990 年 59 巻 3 号 p. 498-502
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    効率的な作物栄養管理を行うにあたっては根におけるイオン吸収のメカニズムおよびその能力を把握する必要がある。この観点よりイネ幼植物における短時間レベルでの低濃度 (250μM) の硝酸イオン吸収を調べた。まず, 日本型水稲品種日本晴とインド型水稲品種Surjamukhiについて蒸留水で育てた幼植物の生育と硝酸吸収能の関係を調べた。播種後10~20日間では両品種間で硝酸吸収に関する差異はなく, 20日目の幼植物では10, 14日目の幼植物に比べて吸収能が低下していることが認められた。つぎに, 日本型, インド型の計10品種を供試し, 播種後l4日目の幼植物における硝酸吸収に及ぼす温度の影響を調べた。その結果, 28℃においては硝酸吸収に関する品種間差異はほとんど認められないこと, 温度の低下に伴い硝酸吸収能が低下するとともに吸収能の低下程度に品種間差異が認められることが明らかになった。低温における硝酸吸収能の低下程度はインド型水稲と日本型陸稲では日本型水稲よりも大きかった。北海道品種赤毛が最も低温下での吸収が大きかった。このように硝酸吸収能とイネ品種の生態型分化との関連が示唆された。カリウム吸収についても調査を行い, その吸収能は硝酸吸収能よりも大きく, 低温の影響も小さいことが明らかになった。
  • 狩野 広美, 石田 信昭, 小林 登史夫, 小泉 美香
    1990 年 59 巻 3 号 p. 503-509
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オオムギ子実における自由水 (NMRで観測し得る水) 含量と呼吸活性の間には強い相関が認められるので水の存在量と運動性を生物活性の指標として用いることができると考えられる。そこで, 1H-NMRイメージング (MRI) により登熟中のオオムギとダイズの子実における自由水の分布地図の変化を追跡した。オオムギにおいては, 自由水の消失は胚乳で不均一に起こり, これは生物活性の低下とデンプンやタンパク質などの貯蔵物質の蓄積を示すと考えられる。オオムギでは出穂後14日目には維管束は大く見えるが登熟が進むとともに細くなり, 39日目には維管束の水が認められなくなった。一方, ダイズでは, 肥大中の子実には自由水が均一に認められるが, 最大肥大期以降の子実および乾燥子実では水のシグナルが認められず, 子実の水は大部分貯蔵物質に結合して束縛された状態であると考えられた。子実に自由水が認められなくなった登熟後期のオオムギの穂においても穂軸と芒には自由水が認められた。また, 子実中には自由水が認められなくなった完熟期のダイズでも莢には自由水が認められた。乾燥ダイズでは弱い1H-NMRのシグナルが観測されたが, これは貯蔵脂肪に由来するものであると考えられる。
  • 井上 吉雄, KIMBALL Bruce A., MAUNEY Jack R., JACKSON Ray D., PIMER Paul J. ...
    1990 年 59 巻 3 号 p. 510-517
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    野外条件でCO2濃度倍加処理を行ったワタについて, 個葉の光合成速度と蒸散速度との関係を調べた。コンピュータ制御のオープントップチェンバーによって, 全生育期間にわたり350μmol mol-1および650μmol mol-1の2段階のCO2濃度が設けられた。350および650μmol mol-1の各CO2濃度下において, 光合成速度と蒸散速度/飽差の間には各々極めて密接な直線関係が得られた。また, 650μmol mol-1における回帰直線の傾きは, 350μmol mol-1でのそれに比べて約62%大きかった。気孔と葉面境界層における水蒸気およびCO2の輸送過程の数式モデルに基づいてこの直線性を解析し, 気孔内外のCO2濃度差が各大気CO2濃度においてはほぼ一定であることを示した。一方, 大気CO2濃度が変化した場合の気孔内外のCO2濃度の比較から, 両者の間には密接な直線関係が存在しその比はほぼ一定に保たれることがわかった。これらの解析から, 大気CO2濃度が350および650μmol mol-1の時の気孔内外のCO2濃度差は各々約60および95μmol mol-1程度と評価された。CO2濃度の倍加は気孔の開孔に対して負のフィードバック効果をもたらし気孔抵抗を約38%増加させたため, 大気CO2濃度の倍加に伴うワタの個葉光合成速度の実質的な増加は約17%と評価された。光合成速度と蒸散速度/飽差の間の密接な比例関係は大気CO2濃度を変えた場合にも成立することが明らかになり, この関係は作物の光合成活性を遠隔的に評価する上で有用と考えられた。
  • セリム ムハマッド, 安藤 和雄, 内田 晴夫, 田中 耕司
    1990 年 59 巻 3 号 p. 518-527
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バングラデシュ低地に位置する2カ村でイネを基幹とする作付体系の調査を行った。一つはキショルゴンジ県の広大な低地, ハオール地帯縁辺部に位置するジョワール村で, もう一つはマイメンシン県に散在する凹地 (ビール) に面するタカルビティ村である。調査にあたっては, 両村のトポシークェンスと作付様式の分布との関係を詳しく分析するために, 村人による土地分類に依拠しつつ, 村の全域を標高に応じて細かい土地単位に区分した。また, ボロ, アウス, アマンの3作期に栽培される作物の全筆調査を実施し, あわせて1986年から88年にかけて水文条件の季節変化を観察・測定した。両村に共通して14タイプの作付様式が認められ, うち10タイプがイネ基幹の様式であった。作付様式の構成や分布は, 両村で大きな違いは認められず, その分布はトポシークェンス, 従って水文条件の季節変化に密接に関連して成立していることが明らかになった。ジョワール村では, アウスイネ 基幹およびアマンイネ基幹の作付様式はカンダイラ・ジョミと呼ばれる高位部の土地に分布し, ボロイネ単作はシャイル・ジョミあるいはボロ・ジョミと呼ばれる低位部の土地での優占的な作付様式であった。ボロイネ基幹の作付様式は, 浅管井戸などの近代的な灌漑方式の導入後, 高位部低地や低位部高地に拡大している。作付様式の同様な分布パターンは, タカルビティ村でも認められた。以上より, 現行の作付様式はバングラデシュ低地特有の条件に適合した, 村人の環境への適応の結果であることが明らかにされた。
  • 武岡 洋治, 伊藤 雅章, 山村 三郎, 坂 斉
    1990 年 59 巻 3 号 p. 528-534
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    化学交雑剤HGR 626の散布の影響によるイネ花器官における形態形成の変化を走査電子顕微鏡 (SEM) および実体顕微鏡で観察し, 各種環境ストレスで誘発される形態形成の変化と比較した。水稲日本晴を1/5000aポットで土耕し, 穎花始源体分化期 (処理I期), または減数分裂盛期 (処理II期) に, 10または50 ppmの同剤水溶液を茎葉散布した。出穂期にFAAで固定した小穂を実体顕微鏡で解剖するとともに, アセトン脱水・臨界点乾燥・金コーティングの後SEMで観察した。処理I期の小穂では両濃度区ともに (1) 小穂器官が標準より矮小化し, 内側に湾曲した葯の割断面では, (2) 花粉母細胞が正常に分化せず柔細胞のみが放射状に配列しているか, (3) 小胞子と葯壁の形成が途中で停止しているもの, (4) 花粉外殻の形状が異常で内容物も充実不十分なもの, または (5) 花粉が隣同士癒着しているものなどが認められた。雌ずいでは組織・器官の形成阻害は見られず, 解剖小穂433個の56.4%が柱頭または子房を増殖していた。処理II期の小穂ではこの種の変化はなく, 同剤供与下での小穂形態形成は処理時期により様相を異にした。性発現における雌性化傾向は環境ストレスにより発現する既往の結果と類似しており, 同剤の影響下での小穂形態形成もこれらによる場合と同様の経過を辿ることが明かになった。処理II期の小穂に処理I期のような変化が生じなかったのは, 処理時期における小穂始源体の頂端分裂組織における形態形成段階の相違によると考えた。
  • 佐藤 肇
    1990 年 59 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    運動型の異なるインゲンマメの2品種について, 光強度と気温の変化に対する小葉の運動を検討した。ポット植えの姫手亡 (上下傾斜型) と大正金時 (横向き傾斜型) を用いて, 側小葉の上下傾斜角と横向き傾斜角の変化を, 各々4段階の光強度と気温のもとで測定した。小葉の2つの傾斜角により算出された葉面法線と光線との角度 (ここでは"葉光角"と呼ぶ) は, どのような光強度でも姫手亡が大正金時より小さかった (第1図) 。これは, 大正金時の横向き傾斜が大きく反応したのに対して, 姫手亡では, 上下傾斜が大きく反応したことによるものであった (弟2図) 。このことは, 光に対する追跡反応と忌避反応を側小葉の上下傾斜と横向き傾斜が各々行う, 調位運動の機能的分化を示しているように思われた。このような現象は, 気温の変化に対する反応からも認められ (第3・4図), 横向き傾斜の増大は小葉が強い光や高温に曝される場合の葉温上昇によってもたらされものと推定された。さらに, 姫手亡の小葉は弱光下でも上下傾斜が大きく反応し, ある強度以下では光強度と共に気温の影響もほとんど受けなかった。しかし, 大正金時の, 特に横向き傾斜の反応は, 光強度の増加や気温の上昇に伴って大きくなることが認められた。従って, インゲンマメの品種における調位運動の差異は, 光に対する感受性と葉温による反応性によってもたらされるものと考えられた。
  • 和田 源七, Sta.CRUZ P.
    1990 年 59 巻 3 号 p. 540-547
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    IRRI育成の62品種/系統を用い, 1986年雨期および1987年乾期に生育初期 (移植後30日間) の窒素吸収量 (NAE) と収量構成要素および吸収窒素の利用効率との関係を調査した。分化Sink量は生育期間の長短および作期に関係なくNAEと相関を示した。退化Sink量は生育期間が比較的長い場合にのみNAEの影響をうけた。Sink量は乾期で生育期間が127日以下, 雨期で122日以下の場合にNAEと相関を示し, 収量は乾期と雨期で生育期間が116日あるいは122 日以下の場合にNAEと相関を示した。中・長期品種ではSinkの退化と不登熟籾の多発がNAEとSinkおよび収量との関係を乱した。NAEは吸収窒素のSink量および分化Sink量への貢献度と生育期間が長くない場合にのみ相関を示した。NAEは早生品種にとって, 窒素吸収量の増大のみならず吸収窒素のSinkに対する貢献度の面を通して重要な形質とみられた。多基肥および高栽植密度もまた初期の窒素吸収量を増大させ, 早生品種の場合には吸収窒素のSink量への貢献度を増大させる。早生品種の窒素吸収能力の不足は密植および多基肥によりかなりの程度補償されると考えられる。
  • 秋田 重誠, ブランコ リブラダ, 片山 勝之
    1990 年 59 巻 3 号 p. 548-556
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    F1雑種水稲の高い初期生長の原因を明らかにするために, 16系統のインディカF1雑種水稲とその両親の胚重, 胚乳重と葉面積が幼苗生長に及ぼす影響について検討を行った。16系統のF1雑種水稲の胚重は両親の中間値よりも大きかった。この内, 11系統のF1雑種水稲の胚重は優れた親の胚重よりも雑種強勢を示した。雑種第2代目の水稲 (F2水稲) の胚重にみられるヘテロシスはF1雑種水稲よりも小さかった。胚乳重については, 必ずしも雑種強勢がみられなかった。発芽後16日間, 水耕栽培したF1雑種水稲の生長量 (幼苗重) は雑種強勢をしめしたが, 4日毎の相対生長率にはほとんど雑種強勢がみられなかった。これらのことから, インディカを両親とするF1雑種水稲の幼苗生長にみられる雑種強勢は, 主として大きい胚重及び高い葉面生長によると推察された。
  • ビリシベ エビアマドンアンディ, 谷口 武, 前田 英三
    1990 年 59 巻 3 号 p. 557-565
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アジア稲 (Oryza sativa L.) 5品種, アフリカ稲 (Oryza glaberrima Steud.) 1品種と野生稲 (Oryza perennis Moench, Oryza latifolia Desv.) 2種の成熟種子を2, 4-Dを含むMS培地で培養したところ, 胚盤が急激に生長し形態形成誘導カルスを形成した。ショ糖濃度の変化は, カルスの生長と再分化に影響を与えた。カルス誘導培地での高いショ糖濃度はカルス形成と, それに引き続く器官形成を助長した。アジア稲, アフリカ稲及び野生稲がら形成されたカルスから幼植物が発生した。形態観察によると, 再分化は器官形成を経て生じることが明らかになった。再分化に関する種間差異についても考察を行った。
  • 大塚 隆, 陽川 昌範, 坂 斉
    1990 年 59 巻 3 号 p. 566-571
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イソプロチオラン (ジイソプロピル-1, 3-ジチオラン-2-イリデンマロネート, IPTと略す) のインゲンマメ下胚軸切片とアズキ上胚軸切片の不定根形成作用に対する影響を調べた。IPTはインゲンマメ下胚軸切片調製直後からの24時間浸漬処理で, IAAに比べて高い発根促進効果を示した。一方, アズキ上胚軸切片では, 切片調製後1時間のIPT浸漬処理でも不定根の形成が促進された。IPTは不定根原基の細胞分裂も促進したので, RNAや蛋白質の生合成阻害剤の影響についても調べた。その結果, アズキ上胚軸切片調製後2時間の10-4Mシクロヘキシミド処理はIPTによる不定根形成を完全に抑制したが, 5×10-4M IPT前処理はこの阻害作用を軽減した。一方, アクチノマイシンDは10-8~10-5 Mでは阻害効果はなく, IPTとの相互作用も認められなかった。以上の結果から, IPTは根原基誘導の為の蛋白質生合成を通じて不定根形成を促進することが示唆された。
  • 阿部 淳, 根本 圭介, 胡 東旭, 森田 茂紀
    1990 年 59 巻 3 号 p. 572-575
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲根系の形成について研究していく場合, 個体間あるいは株間で1次根の分布を比較する必要があるが, 従来有効な手法が開発されていなかった。これは1次根の伸長方向 (GDPR) の分布がどのようなものであるか, 必ずしも明らかではないためである。したがって, 異なる標本間におけるGDPRの分布の差を検討するには, 分布の形についての前提を必要としないノンパラメトリック法の利用が妥当と考えられる。本研究では, 同一条件下で栽培した3品種, すなわち, 南京11号 (A), 土橋1号 (B), および, 無芒愛国 (C) の代表株について, Kolmogorov-Smirnov two sample testを用いて, GDPRの分布の差の検定を行なった。この方法では, 各標本の累積相対度数分布 (Sn(x)) を求め, 2標本間のSn(x) の差の最大値が, 棄却値Dαより大きい場合には, 「2つの標本のGDPRは有意水準αで互いに異なった分布を持つ」と判定する。ヒストグラムではBがAとCとの中間型のGDPRの分布を示すようにみえたが, 検定の結果, AのみがB, Cとは有意に異なったGDPRの分布を持つことが明らかとなった。このことは, 従来, 統計学的手法による厳密な解析にはなじみにくかった水稲1次根の形質についての検討に, ノンパラメトリック法が有効であることを示唆するものである。
  • 山崎 耕宇, 馬場 正
    1990 年 59 巻 3 号 p. 576-577
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 廣井 清貞, 西村 隆雄, 服部 一三, 武岡 洋治
    1990 年 59 巻 3 号 p. 578-579
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 森田 茂紀, コリンズ ハロルドP
    1990 年 59 巻 3 号 p. 580-581
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 俣野 敏子
    1990 年 59 巻 3 号 p. 582-589
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 宇田川 武俊
    1990 年 59 巻 3 号 p. 590-591
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 深井 周
    1990 年 59 巻 3 号 p. 595-599
    発行日: 1990/09/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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