抄録
我が国が農林水産省生物資源研究所に保存するダイズ遺伝資源約4,400点につき, 近赤外分光法により粗タンパク含有率 (以下タンパクと略す), 粗脂肪含有率 (以下脂肪と略す) 及び炭水化物含有率 (以下炭水化物と略す) を分析した。ダイズの成分育種に資する情報を得るため, 3成分相互間の相関を検討するとともに, 相関の対象からはずれる第3の成分や粒大等に関する類別を行った場合に認められる相関を検討し以下の結果を得た。1. タンパクと脂肪との間に認められる負の相関 (r=-0.594**, n=4,404) は炭水化物又はタンパクの多少にかかわらず一様に強かった。2. 炭水化物と脂肪との間に認められる負の相関 (r=-0.561**, n=4,404) はタンパクの多少によらず強かった。しかし相関係数は高脂肪・低炭水化物側で高く, 低脂肪・高炭水化物側では相関は認められなかった。3. 炭水化物とタンパクとの間にも有意な負の相関が認められた (r=-0.147**, n=4,404) 。しかし相関係数はタンパク・脂肪間及び炭水化物・脂肪間の場合よりはるかに低かった。また相関係数は高脂肪グループより低脂肪グループの方が, 低炭水化物側より高炭水化物側の方が高かった。4. これらの事から推定すると, タンパクか脂肪かの選択は常に行われているようであり, また, 高脂肪品種では炭水化物がかなり低くなるまでこれの脂肪への積極的な変換が図られているようである。炭水化物に恵まれると成分間の競合が少なくなる傾向にあるが, この場合どちらかと言うと脂肪よりタンパクに振り向けられているようである。5. 3成分間の相関係数は粒大により異なった。タンパク・脂肪間では小粒ほど相関が高く, 炭水化物・脂肪間では中~大粒で高く小粒で低かった。また炭水化物・タンパク間では大粒で比較的高いが, 小~中粒で低く, 有意でない場合もあった。