抄録
ビール大麦における土壌の過湿条件が子実の形態に及ぼす影響を明らかにするため, 過湿処理の程度を数段階に分けて, 湿害が穎の大きさ, 粒の大きさおよび側面裂皮粒の発生程度に及ぼす影響について検討した。また, 過湿としゃ光, 低温および高温を組み合わせた場合についても検討した。過湿処理は6段階とし, 程度の大きい方からI (湛水状態) ~VI (土壌表面が乾かない程度) とした。穎の大きさは, 茎立期から出穂期までの過湿および過湿と止葉展開期から出穂期までのしゃ光, 低温および高温を組み合わせた処理ともに過湿の程度が大きい区ほど小さかった。さらに, 過湿としゃ光および低温を組み合わせた処理の穎は著しく小さかった。過湿のみの処理における粒の大きさはVI~IV区が同程度か過湿が大きい区ほどやや小さい傾向にあり, IV→I区では過湿の程度が大きい区ほど小さかった。これに対し, 過湿のみの処理における側面裂皮粒率は過湿の程度が比較的小さいIV区とV区で最も高く, 過湿の程度が大きい区で低かった。以上の結果から, 茎立期から出穂期までの土壌の過湿の程度が大きい区ほど, ビール大麦の穎の発育が抑えられ, さらにこの時期の湿害と止葉展開期から出穂期までの日照不足および低温の複合作用によって穎は著しく小さくなった。粒の大きさは茎立期から出穂期までの過湿が大きい場合に抑えられた。また, 側面裂皮粒は穎と粒の大きさがアンバランスな場合に発生しやすいと考えられる。