8品種のSaccharum officinarumと1品種のS. sinenseのサトウキビを用いて, 葉身の窒素含量が光合成能力に及ぼす影響を, 最上位の完全展開葉について検討した。サトウキビを窒素濃度の異なった水耕液で育て4回の調査を行った。各調査を葉身窒素区I~IVと類別し窒素栄養の影響を検討した。個葉の光-光合成関係, 並びに個葉光合成に関連する葉内要因として, 光条件が2000μmol/m
2/sの時の光合成速度 (P
2000) と水蒸気交換係数 (D
2000), 光条件が240μmol/m
2/sの時の光合成速度 (P
240) と水蒸気交換係数 (D
240), 葉身の全窒素含量 (N), 可溶性タンパク含量 (SOLP), クロロフィル含量 (CHL), フラクション1タンパク含量 (F 1 P), ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ (PEPC) 活性を取り上げた。上記の測定項目の中で, P
240, N, F 1 Pで品種間に統計的に有意な差が認められた。葉身窒素区と, 品種と葉身窒素区の交互作用については, 取り上げた光合成要因の全てについて統計的に有意な差が認められた。品種と葉身窒素区を込みにしてサトウキビの光合成要因間の関係を見ると, P
2000はD
2000と最も高い相関を示し (r=0.747, P<0.01), CHL, SOLP, PEPCとはそれぞれ0.657 (P<0.01), 0.648 (P<0.001), 0.556 (P<0.001) と統計的に有意な相関を示した。P
240は, CHL, SOLP, Nと0.667 (P<0.001), 0.646 (P<0.001), 0.574 (P<0.001) という有意な相関を示した。SOLPに占めるF 1 Pの割合は, 窒素基準区 (I区) より窒素含量の少ないII区で大きくなった。また, サトウキビの光合成における窒素利用効率は, 2.5~3.7 mgCO
2/mgN/hであった。
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