日本作物学会紀事
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59 巻, 4 号
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  • 野瀬 昭博, 仲間 操
    1990 年59 巻4 号 p. 641-648
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    8品種のSaccharum officinarumと1品種のS. sinenseのサトウキビを用いて, 葉身の窒素含量が光合成能力に及ぼす影響を, 最上位の完全展開葉について検討した。サトウキビを窒素濃度の異なった水耕液で育て4回の調査を行った。各調査を葉身窒素区I~IVと類別し窒素栄養の影響を検討した。個葉の光-光合成関係, 並びに個葉光合成に関連する葉内要因として, 光条件が2000μmol/m2/sの時の光合成速度 (P2000) と水蒸気交換係数 (D2000), 光条件が240μmol/m2/sの時の光合成速度 (P240) と水蒸気交換係数 (D240), 葉身の全窒素含量 (N), 可溶性タンパク含量 (SOLP), クロロフィル含量 (CHL), フラクション1タンパク含量 (F 1 P), ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ (PEPC) 活性を取り上げた。上記の測定項目の中で, P240, N, F 1 Pで品種間に統計的に有意な差が認められた。葉身窒素区と, 品種と葉身窒素区の交互作用については, 取り上げた光合成要因の全てについて統計的に有意な差が認められた。品種と葉身窒素区を込みにしてサトウキビの光合成要因間の関係を見ると, P2000はD2000と最も高い相関を示し (r=0.747, P<0.01), CHL, SOLP, PEPCとはそれぞれ0.657 (P<0.01), 0.648 (P<0.001), 0.556 (P<0.001) と統計的に有意な相関を示した。P240は, CHL, SOLP, Nと0.667 (P<0.001), 0.646 (P<0.001), 0.574 (P<0.001) という有意な相関を示した。SOLPに占めるF 1 Pの割合は, 窒素基準区 (I区) より窒素含量の少ないII区で大きくなった。また, サトウキビの光合成における窒素利用効率は, 2.5~3.7 mgCO2/mgN/hであった。
  • 渡辺 巌, 長沢 次男
    1990 年59 巻4 号 p. 649-660
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    我が国が所有するダイズ遺伝資源の主要特性を把握するため, 約4,400点につき子実の外観的形質を調査するとともに近赤外分光法により化学成分の分析を行った。これらのデータをもとに粒大, 種皮色, 臍色及び化学成分含有率の頻度分布と取り寄せ地別にみた遺伝資源の特色につき解析し以下の結果を得た。1. 遺伝資源の約35%は国外から取り寄せたものであるが, 栽培の歴史が古いアジア諸国からのものは約18%にすぎず, 今後とも収集に努める必要がある。2. 「だいず品種特性分類審査基準」により分級した粒大の頻度分布は小粒が約16%, 中粒が約63%, 大粒が約21%であった。取り寄せ地がアジアのものは概して低緯度地帯のものほど小粒であり, 特にタイ及びインドのものはほとんどが小粒であった。3. 種皮色の頻度分布は約26%がいわゆる色豆 (緑, 褐, 黒又は斑色) であり, 約74%が黄又は黄白であった。インドネシア, ネパール, インドでは色豆が多く, 特にネパールでは褐又は黒が, インドでは黒が多かった。4. 臍色の頻度分布は約32%が褐で最も多く, 以下は黄>黒>暗褐>淡褐>淡黒>緑の順であった。5. アジアでは取り寄せ地の緯度による化学成分上の特色が認められた。すなわち, 高緯度地帯のものは低タンパク・高脂肪, 低緯度地帯のものは高タンパク・低脂肪であった。6. 粒大と化学成分との関係では小粒ほど高タンパク・低脂肪であり, 特に種皮色黒の極小粒種は野生種に近い化学成分含有率を示した。7. 日本のものは粒が大きく, タンパク質, 脂肪ともにやや低く, 炭水化物が高い点に特色があった。
  • 渡辺 巌, 長沢 次男
    1990 年59 巻4 号 p. 661-666
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    我が国が農林水産省生物資源研究所に保存するダイズ遺伝資源約4,400点につき, 近赤外分光法により粗タンパク含有率 (以下タンパクと略す), 粗脂肪含有率 (以下脂肪と略す) 及び炭水化物含有率 (以下炭水化物と略す) を分析した。ダイズの成分育種に資する情報を得るため, 3成分相互間の相関を検討するとともに, 相関の対象からはずれる第3の成分や粒大等に関する類別を行った場合に認められる相関を検討し以下の結果を得た。1. タンパクと脂肪との間に認められる負の相関 (r=-0.594**, n=4,404) は炭水化物又はタンパクの多少にかかわらず一様に強かった。2. 炭水化物と脂肪との間に認められる負の相関 (r=-0.561**, n=4,404) はタンパクの多少によらず強かった。しかし相関係数は高脂肪・低炭水化物側で高く, 低脂肪・高炭水化物側では相関は認められなかった。3. 炭水化物とタンパクとの間にも有意な負の相関が認められた (r=-0.147**, n=4,404) 。しかし相関係数はタンパク・脂肪間及び炭水化物・脂肪間の場合よりはるかに低かった。また相関係数は高脂肪グループより低脂肪グループの方が, 低炭水化物側より高炭水化物側の方が高かった。4. これらの事から推定すると, タンパクか脂肪かの選択は常に行われているようであり, また, 高脂肪品種では炭水化物がかなり低くなるまでこれの脂肪への積極的な変換が図られているようである。炭水化物に恵まれると成分間の競合が少なくなる傾向にあるが, この場合どちらかと言うと脂肪よりタンパクに振り向けられているようである。5. 3成分間の相関係数は粒大により異なった。タンパク・脂肪間では小粒ほど相関が高く, 炭水化物・脂肪間では中~大粒で高く小粒で低かった。また炭水化物・タンパク間では大粒で比較的高いが, 小~中粒で低く, 有意でない場合もあった。
  • 浜地 勇次, 吉野 稔, 古庄 雅彦, 吉田 智彦
    1990 年59 巻4 号 p. 667-671
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ビール大麦における土壌の過湿条件が子実の形態に及ぼす影響を明らかにするため, 過湿処理の程度を数段階に分けて, 湿害が穎の大きさ, 粒の大きさおよび側面裂皮粒の発生程度に及ぼす影響について検討した。また, 過湿としゃ光, 低温および高温を組み合わせた場合についても検討した。過湿処理は6段階とし, 程度の大きい方からI (湛水状態) ~VI (土壌表面が乾かない程度) とした。穎の大きさは, 茎立期から出穂期までの過湿および過湿と止葉展開期から出穂期までのしゃ光, 低温および高温を組み合わせた処理ともに過湿の程度が大きい区ほど小さかった。さらに, 過湿としゃ光および低温を組み合わせた処理の穎は著しく小さかった。過湿のみの処理における粒の大きさはVI~IV区が同程度か過湿が大きい区ほどやや小さい傾向にあり, IV→I区では過湿の程度が大きい区ほど小さかった。これに対し, 過湿のみの処理における側面裂皮粒率は過湿の程度が比較的小さいIV区とV区で最も高く, 過湿の程度が大きい区で低かった。以上の結果から, 茎立期から出穂期までの土壌の過湿の程度が大きい区ほど, ビール大麦の穎の発育が抑えられ, さらにこの時期の湿害と止葉展開期から出穂期までの日照不足および低温の複合作用によって穎は著しく小さくなった。粒の大きさは茎立期から出穂期までの過湿が大きい場合に抑えられた。また, 側面裂皮粒は穎と粒の大きさがアンバランスな場合に発生しやすいと考えられる。
  • 飯田 周治, 新村 善男, 上森 晃, 久津那 浩三
    1990 年59 巻4 号 p. 672-678
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    耕耘方法の相違や大型機械の土壌踏圧が作業能率, 土壌状態の変化, 水稲の生育収量に及ぼす影響について検討した。壌土質乾田で, 1) 小型ロータリ (耕耘機) 利用耕深12 cm区を標準にし, 2) 大型トラクタのロータリ利用耕深12 cm区, 3) 同プラウ利用耕深18 cm区, 4) 同ロータリ利用耕深18 cm区, 5), 6) 乾燥時と湿潤時に大型機械による踏圧を加えたあと, 同ロータリ耕深12 cmの乾燥踏圧区と湿潤踏圧区の計6区を設け, 品種マンリョウを供試して1978~1979年の2年間成苗の移植栽培を行った。圃場耕起にはロータリ耕が容易で, プラウ耕は作業行程で2倍, 作業時間で約5倍を要し, 田面の均平にかなりの困難を伴った。大型機械の0.3~0.4 kg/cm2の土壌踏圧による土壌のしまりの影響では, 土壌硬度, 土壌三相分布, 土壌圧密量の変化は少なく, 土壌透水量の減少が最も著しかった。水稲の生育や収量に及ぼす影響では, 水稲の生育や分けつ発生は1), 2) の小型ロータリや大型ロータリ利用の耕深12 cmと比較して, 4) 大型ロータリ耕深18 cm区, 次に5), 6) 乾燥踏圧区と湿潤踏圧区 (以下両踏圧区) の耕深12 cm 区か, 3) 大型プラウ耕深18 cm区が良好であった。収量調査の結果でも生育とほぼ同じ傾向で, 1) 小型ロータリ耕深12 cmの597~498 kg/10 aの収量水準に対して, 4) 大型ロータリ耕深18 cm区は114~111%, 5), 6) 両踏圧の耕深12 cm区が111~102%, 3) 大型プラウ耕深18 cm区が107~106%の収量比を示した。水田の圃場耕起にはプラウに比べロータリが有利であり, 土壌のしまりによる生育等への負の影響はなく, 水稲の収量は耕深の深い大型ロータリ耕深18 cm区が優った。
  • 楠谷 彰人, 三分一 敬
    1990 年59 巻4 号 p. 679-686
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    冷温登熟性品種育成のための育種母材と選抜指標を探る目的で, 内外の新旧39品種・系統の登熟力を調査した。あわせて, 登熟関連形質に対する主成分分析を行って, 登熟性に関する理想型を得ようと試みた。その結果, (1) 前期登熟力および後期登熟力の両方に顕著な品種間差が認められた。「キタヒカリ」, 「空系61094」, 「ユーカラ」, 「さちほ」, 等は前期登熟力にすぐれ, 「キタアケ」, 「きたこがね」, 「なるかぜ」等は後期登熟力が高かった。「キタアケ」, 「キタヒカリ」, 「きたこがね」, 「なるかぜ」の4品種は前, 後期を総合して高い登熟力を示し, 今後, 冷温登熟性品種育成のための交配母本として広く活用できると考えられた。(2) 主成分分析の結果, 第1主成分は乾物生産のパターンに関連する草型を表す因子と推定され, 出穂期後の乾物生産量が多い短稈穂数型品種の第1主成分が大きかった。第2主成分は根の活力や穂型を総合した転流に関わる因子と推定され, 穂首が長く抽出し, 1次枝梗着生籾の割合が低く, 止葉が下垂し, 刈株からの再生量が少ない品種の第2主成分が大きかった。(3) 供試品種の前期登熟力と第2主成分スコアとの間にr=-0.70***, 後期登熟力と第1主成分スコアとの間にr=0.69***の相関が認められた。これらから, 第1主成分スコアが大きく, かつ第2主成分スコアの小さい品種が現在想定される登熟性に関する理想型と考えられ, この方向への選抜が冷温登熟性品種育成のための指標になると判断された。(4) 得られた指標では「キタアケ」, 「キタヒカリ」, 「なるかぜ」タイプの品種は選びとれるが, 「きたこがね」タイプの品種は選び落とす可能性があるとみられた。
  • 堀江 武, 中川 博視
    1990 年59 巻4 号 p. 687-695
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの幼穂分化, 出穂および成熟などの発育ステージを環境要因の経過から予測するモデルの基本構造とパラメータの推定法を提案し, その考え方のもとに出穂期の気象的予測モデルを導き, 水稲品種日本晴に適用した。本モデルでは, de Witらの発育速度の慨念を適用して, 出芽後n日目の発育指数 (Developmental Index, DVI) はその間の発育速度 (Developmental Rate, DVR) を積算したものとして与える。さらに出芽時のDVIを0, そして出穂時のそれを1と定めることによって, 出芽から出穂に到る発育過程をDVI=0~1の間の連続的な数値として表すことができる。このようなDVIの制約条件下で, DVRと気温および日長との関係を与える数式を導き, かつそのパラメータを, 筑波と京都での日本晴の作期移動試験および人工気象室実験から得られた出穂日のデータを用いて, シンプレックス法によって決定した。得られたパラメータの値から, 日本晴の出芽から出穂までの最小日数 (基本栄養生長性) は51.4日, 限界日長は15.6時間, 発育の最低温度は12~13℃, 同最適温度は30~32℃, そして日長に感応し始める時期はDVI=0.20と推定された。本モデルによる出穂データの推定精度は標準誤差で3.6日であったが, 従来の有効積算温度法によるそれは6.5日であった。したがって, 本報のモデルは従来の方法に比較して高い予測精度を得ることが可能と考えられる。
  • 三浦 秀穂
    1990 年59 巻4 号 p. 696-700
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北海道の主要なアズキ品種を用い, 2年間にわたって収量構成要素 (主茎莢数, 分枝莢数, 一莢内粒数および百粒重) の品種間差異と遺伝相関を調べた。さらに6品種間の片面ダイアレル交雑を用い, それら形質の遺伝分析を行った。4形質いずれでも大きな品種間差異が認められ, 年次間変動の大きかった分枝莢数を除くと, 試験区平均をもとに推定した遺伝率は75%以上と高かった。ダイアレル分析から, 主茎莢数と分枝莢数の遺伝変異は, 遺伝子の相加的効果に比べ優性効果の支配を強く受け, それぞれ主茎莢数の少ない方向および分枝莢数の多い方向に優性を示すことがわかった。一方, 一莢内粒数と百粒重の遺伝変異は優性効果よりも遺伝子の相加的効果の支配を強く受けた。主茎莢数は他の3形質と遺伝的にも環境的にも独立であると推定された。分枝莢数は一莢内粒数とは正の, 百粒重とは負の遺伝相関があり, それらは遺伝子の相加的効果の間の相関に起因していた。一莢内粒数と百粒重は, 高い負の遺伝相関を示した。以上の結果から, 主茎莢数と分枝莢数は独立した遺伝支配を受けることが示唆され, 独自の選抜が可能であろう。その場合, 両形質とも分離の多い初期世代より固定のより進んだ世代での高い選抜効果が期待できる。逆に一莢内粒数と百粒重に対しては初期世代での選抜が有効と考えられた。
  • 後藤 雄佐, 槌山 隆, 星川 清親
    1990 年59 巻4 号 p. 701-707
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の主茎と各分げつについて, 葉齢と幼穂発育過程との関係を調べた。水稲品種ササニシキを2期に分けて播種し (I, II区), 1ポット (1/5000 a) 当り3個体で育て供試した。個体内全茎の齢を同一視点から解析するために, 齢のスケールとして, 止葉抽出完了時を起点としてさかのぼって数えた葉齢 (補葉齢: cA) を用いた。また幼穂発育ステージ (PS) は, 止葉原基分化期から穎花原基分化後期までを12段階に分級する方式を用いた。主茎および分げつ位ごとの平均値でみると, PSとcAとは直線的な関係にあった。この関係は個々の茎においても認められた。また, 個体内でのPSとcAとの変動は, 幼穂分化開始から日数がたつほど大きくなった。PS 3以上の茎について, PS (y軸) とcA (x軸) との関係式を求めると, y=15.95-3.74xとなった。形態上幼穂分化開始と判断できるPS 3 (苞原基増加期) となる時の補葉齢を, この式から求めるとcA 3.5であった。また, 個々の茎の観察から, PS 2 (第1苞原基分化期) からPS 3に移行するのはcA 3.6からcA 3.3までであることが明かとなった。すなわち, 15枚の葉を持つ主茎から, 4または5枚の葉を持つ分げつまでを対象にしても, 幼穂分化開始 (PS 3) の時期は止葉から数えて4枚目の葉がほぼ半分ほど抽出した頃であった。また, 主茎に着目して, 幼穂発育ステージを推量できる外見上の齢として, 葉齢指数と補葉齢との関係を考察した。
  • 小野 良孝
    1990 年59 巻4 号 p. 708-714
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サトウキビの節間生長経過に見られる特徴と, 主茎に分化した各節の節間長, 節間径の季節変化について解析した。3品種 (F 161, NCo 310, 読谷山) における特定の1節間の伸長, 肥大生長は, 当該節に着生した葉身が完全に展開した日から10日目までの間に急激に行われ, 20日目までにほぼ終了した。しかし, 節間乾物重の増加は, 読谷山では葉身展開後70日目まで, 他の2品種では100日目まで漸増的に推移した。また, 成熟度の指標である節間の含水量の減少, ブリックスの増加は葉身展開後約100日目まで継続的に見られた。約1カ月間隔で周年的に値付けたF 161の主茎の各節における節間長, 節間径には, それらの生長時期に対応した顕著な季節変化が認められた。節間生長における季節変化を明らかにするために, 各植区の主茎基部の第11節位から各10節間を対象に, 節間の生長量と生長期間の気象要素間の関係を解析した。その結果, 節間長と3気象要素との間にいずれの節位においても正の単相関が認められた。しかし, 互いに他の2要素の影響を排除した節間長との偏相関は, 平均日射量と最も高い正の関係を, 次いで降水量と正の関係を示したが, 平均気温とは負の関係であった。節間径と3気象要素との単相関では, 第11~30節位の節間径と平均気温, 降水量との間には負の有意な相関が, 一方, 第31節位以上の節間径と気象3要素との間には正の相関が見られた。各節位の節間径と気象3要素との偏相関は, 平均気温と負の高い関係を示し, 次いで平均日射量, 降水量と正の関係を示した。
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1990 年59 巻4 号 p. 715-720
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    稈長, 熟期の異なる3品種 (長稈品種ハルヒカリ, 半矮性品種ハルユタカ, 長稈, 晩生品種Selpek) を供試し, エテホン処理が春播コムギの形態形成におよぼす影響について検討した。処理は, 幼穂分化期から止葉出葉期まで (幼穂形成期間処理, DR処理区) と止葉出葉期から開花期まで (稈伸長期間処理, CE処理区) に行い, それぞれ100 ppmのエテホンを4日間隔で幼穂形成期処理では4回, 稈伸長期処理では6回, 連続散布した。各品種ともエテホン処理によって出穂, 開花および成熟の各時期は, 変化しなかったものの (第1表), 稈の伸長が抑制され (第1図), 特に, DR処理区では下位節間の伸長が, CE処理区では上位節間の伸長が強く抑制された (第2表) 。また, 稈内の可溶性糖含有率はCE処理区で高く推移し (第2図), 乳熟期には品種, 処理をこみにして稈長と高い負の相関 (r=-0.930**) を示した (第3図) ことから, 短稈化により余剰同化産物の蓄積量が増加することが示唆された。一方, 収量は統計的には有意でなかったものの, DR処理区において穂数と一穂粒数の増加による増収効果が認められた。一般に, エテホン処理は, 倒伏防止を目的に穂ばらみ期前後に行われるが, 幼穂形成期処理により増収する可能性があることが示唆された。
  • 楠田 宰
    1990 年59 巻4 号 p. 721-726
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の機械移植では, 1株植付け本数を一定にすることは一般に困難であり, この本数にはばらつきが生じる。このばらつきは, その後の水稲諸形質の株間変動に影響を与えているものと考えられる。そこで, 通常の機械移植水稲における量的諸形質の株間変動係数, また, 1株植付け本数をランダムに変動させた場合の量的諸形質の株間変動係数に及ぼす影響を調査, 解析し, 標本調査を行う場合の必要標本数について検討した。1株植付け本数の変動係数が40%程度の機械移植水稲においては, 草丈, 稈長などの伸長形質の変動係数は手植え水稲のそれに比べてほとんど差が認められなかった。しかし, 茎数, 穂数, 全籾数などの数量形質および乾物重, 穂重などの重量形質の変動係数は機械移植水稲の方が大きい傾向にあり, その差は, 最高分げつ期に最も大きく, 穂揃期, 成熟期へと生育が進むに従って小さくなった。さらに, 数量形質, 重量形質の変動係数は, 1株植付け本数の変動係数が20%までは増大の程度が小さかったが, 40%になると急増した。機械移植水稲の標本調査を行う場合, 手植え水稲における調査と同程度の精度で推定値を得るのに必要な標本数は, 伸長形質については手植え水稲と同数, 数量形質, 重量形質については, 最高分げつ期では手植え水稲の2.3倍程度, 穂揃期では1.7倍程度, 成熟期では1.2倍程度が必要と判断された。また, ポット成苗田植機のように1株植付け本数の変動係数が20%程度以下の場合には, 手植え水稲における標本数と同数で良いと判断された。
  • 杉本 秀樹, 佐藤 亨
    1990 年59 巻4 号 p. 727-732
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    湿害発生時におけるダイズの根粒着生の意義を明らかにするために, 根粒着生系統「T 202」と根粒非着生系統「T 201」の同質遺伝子系統を転換畑で栽培し, 花芽分化期, 開花期および登熟期に8~10日間, 畦間に5~8 cmの深さに水を溜めて過湿処理を行った。葉身窒素含有率ならびに乾物生産は, 両系統ともいずれの生育段階においても過湿処理によって減少したが, その程度はT 202の方が小さかった。花芽分化期と開花期においては, 葉身窒素含有率, 乾物生産ともにT 202では処理が終わると約15日で回復したのに対し, T 201では回復しなかった。子実収量は乾物生産量の減少によって低下したが, その程度もT 202で小さかった。このような両系統の違いは, 根粒による固定窒素供給の有無によってもたらされた。すなわち, T 202は根粒が着生することによって過湿障害が軽減され, それからの回復も早められることが明らかとなった。また, 以上の結果から判断して, 根粒による固定窒素の供給は湿害を軽減するうえで重要な役割をはたしているものと推察された。
  • 浜地 勇次, 吉田 智彦
    1990 年59 巻4 号 p. 733-736
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    從来, ビール大麦の穀皮の厚さは穀皮歩合あるいは外観調査によって推定されるのみであったが, 本研究ではビール大麦5品種について穀皮の厚さを実測して, その品種差異を検討するとともに, 正常位と側面裂皮粒の穀皮の厚さを比較した。ビール大麦5品種の正常位の厚さは, にらさき二条, ニシノゴールドおよび吉糸16の3品種が3.3~3.6×10-2 mm, あまぎ二条ときぬゆたかの2品種が4.3~4.5×10-2 mmであり, 前者の3品種の穀皮が後者の2品種より薄かった。にらさき二条とニシノゴールドは麦芽エキスが83.2%~83.8%で穀皮のしわが多く, あまぎ二条ときぬゆたかは81.3%~81.9%で穀皮のしわは少なかった。にらさき二条, ニシノゴールドおよび吉糸16の3品種の穀皮の厚さの平均値は, 正常粒と側面裂皮粒で各々3.4×10-2 mmと3.5×10-2 mmであり, 両者間に差が認められなかった。また, 粒の位置によるの穀皮の厚さ差は小さかった。以上の結果から, ビール大麦の穀皮の厚さに品種差異があり, 麦芽エキスが高くしわが多い品種の穀皮は麦芽エキスが低くしわが少ない品種より薄かった。また, 正常粒と側面裂皮粒の厚さには差がないことが明らかになった。
  • 山本 由徳, 久野 訓弘
    1990 年59 巻4 号 p. 737-746
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    普通期栽培の中生品種, 黄金綿の成苗について, 根あるいは葉身, および葉鞘を含む地上部の剪除程度を異にする12種類の苗を設けて移植し, 活着日数の差異が移植後の生育と収量関連形質に及ぼす影響について検討した。1. 移植後の初発分げつ迄日数と移植後7~8日目の発根量および根の活力, 並びに移植後19日目の分げつ数との間には非常に高い有意な負の相関関係がみられたことから, 初発分げつ迄日数は損傷部位および程度を異にする苗の活着日数の指標となりうるものと考えた。2. 活着日数の増加に伴って主稈葉数は増加し, 止葉展開日および出穂期は遅延した。しかし, 主稈葉数と平均出葉速度との間には高い有意な正の相関関係がみられ, 生育時期の遅延程度は活着日数にくらべて小さくなった。そして, 活着の遅れた苗ほど移植後初期の生育は劣ったが, 活着後は急速に生育速度が回復し, 出穂期における個体当りの葉面積および乾物重は全葉剪除苗と全根剪除苗では無処理苗の約90%まで, また地上部3 cm苗ではそれぞれ約80%および85%まで回復した。3. 活着日数と最高分げつ数および穂数との間には有意な負の相関関係がみられた。しかし, 活着日数と1穂重との間に有意な正の相関関係がみられたために, 株当り穂重に対する苗体の損傷の影響は小さく, 無処理苗にくらべて多くの剪除処理苗で優った。また, 株当りわら重および全重への影響は, 実験年次の気象条件等の差によって異なり, それに伴って穂重/わら重比への影響も変化した。
  • 稲永 忍, 伊藤 浩司, 矢島 経雄, 稲生 英夫, 秦野 茂
    1990 年59 巻4 号 p. 747-751
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ネピアグラスの品種Merkeronを用い, 翌春の種苗として用いる, 側芽を持つ茎の冬季貯蔵方法を開発するために, 側芽の生存率や伸長に及ぼす温度の影響について調べ, さらに切断茎の冬季地下貯蔵を試みた。圃場に生育する個体の側芽は日最低気温が1℃に低下する時までは生存していたが, それが-3℃まで低下すると枯死した。切断茎に対する一時的低温処理 (0℃未満, 24時間) は側芽の生存率を50%以下に低下させた。また, いずれの処理温度 (-9, -6, 0, 2℃) の下においても, 上位節より下位節の側芽が高い生存率を示した。圃場の刈り株苗 (刈り取り位置地上10 cm) は稲わら (厚さ20 cm) とビニールフィルムで被覆したもののみ越冬し, その越冬限界温度は-0.9~4℃の範囲にあると推定された。切断茎を地下60 cmの土中に埋設貯蔵したところ, 側芽の40%が越冬した。この場合, 切断茎の節数の違いは側芽の生存率に影響を及ぼさなかった。切断茎の側芽の伸長開始能力は貯蔵温度が25~40℃の範囲で最も高く, 貯蔵温度5℃下では枯死も伸長もせず, 45℃下では枯死した。以上のことから, 翌春に種苗として用いる茎の冬季貯蔵は, 最低気温が0℃以下となる以前に茎を採取し, それを5℃前後の温度が保てる土中などに貯蔵することによって可能であるといえる。
  • PARDALES Jose R. Jr., 河野 恭広
    1990 年59 巻4 号 p. 752-761
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    乾燥ストレスの増加にともなう根系生長の経時的な変化を, 各根系構成要素別に調査した。乾燥ストレスが増加する条件下 (乾燥区) でも, 節根および節根軸上の側根数は増加したが, それらの根数は, 圃場容水量に維持された条件 (対照区) と比較して常に少なかった。それに対して, 種子根軸上の1次側根は, 乾燥処理開始後間もなく根数増加を停止し, その後は顕著に減少し続けた。節根および節根軸上の側根の全根長の増加率は, それぞれ乾燥区でも経時的に高まったが, 実験後期においては, 増加率は低下した。この低下は, 主として新たに発生する節根と側根の長さが短いことによっていた。種子根軸上の全1次側根長も, 同様に乾燥区で短かった。各根系構成要素の数と長さの1日当りの増加率は, 一般に乾燥区で低下した。また乾燥区では, 根端生長点と皮膚細胞の生存度が顕著に減少した。対照区においても, 幼穂分化期を境に各根系構成要素の生長点の生存度の著しい低下が生じ, 幼穂分化も根端の生存度を変化させる一要因であると推測された。20日間の乾燥処理後, 植物 (30日齢) が初期しおれ点に達したとき, 再潅水し, 対照区の水分条件に戻したが, 節根軸およびその1次側根は数と長さを増加し, 生長回復を示したのに対して, 種子根軸およびその1次側根では, 生長回復は認められなかった。
  • 井上 吉雄
    1990 年59 巻4 号 p. 762-768
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    トウモロコシとコムギの個体群を対象として断根処理を行い, 個体群の熱赤外画像と光合成速度など生理機能を同時計測することによって, ストレスによる生理的な異常を隔測的に把握する手法を検討した。熱赤外画像はサーモグラフィ装置を用いて対象から5~20 m離れたところから測定した。熱赤外画像の1画面は512 (横) ×240 (縦) の画素からなり, 1画面の走査速度は8秒, 感度は0.05℃であった。圃場での観測では, 熱画像をビデオテープに連続して記録し, 実験室において解析した。作物に対するストレス処理は, 立毛状態のまま地下約20 cmの深さで薄い金属板により根系を切断することによって行った。個体群には処理による外観的な変化は認められなかった。処理区と無処理区の群落における平均植被温度の差はトウモロコシで最大4.2℃, コムギで同3.1℃に達した。この間, 処理区では光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスに大幅な低下が発生し, 逆に植被温度には大きな上昇がみられた。植被表面温度の面的な頻度分布はガウス分布となり, この曲線は生理機能の低下とともに高い方へ移動した。また, この間の温度変化は疑似カラーの熱画像によって, 極めて明瞭に判読することができた。環境ストレスによる作物の生理的な変動を, 隔測的, 即時的かつ群落状態のまま面的に把握する上で, 熱赤外画像手法が有効であることを示した。
  • 和田 富吉, 小川 佳子, 伊藤 辰也, 鈴木 完明, 武岡 洋治
    1990 年59 巻4 号 p. 769-777
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの花粉母細胞と葯壁組織内の細胞の発達経過を明らかにする目的で, グリコールメタクリル樹脂準超薄切片法により試料の調製をおこない, 光学顕微鏡下で観察した。花粉母細胞の形成期には, 4種類の葯壁組織すなわち表皮, エンドテシウム, 中間層およびタベート層が発達した。花粉母細胞の分離期までに, 中間層とタベート層の間の細胞壁部分において硬化と物質透過性の低下が生ずるものと推察した。タベート細胞はしばしば分裂し, 多核細胞となった。花粉母細胞の小胞内やカロース壁および葯液内に, アルデヒド固定によって良く保存される微細な繊維状の物質が認められた。花粉母細胞の核の構造はオスミック酸の後固定により明瞭に観察された。カロース壁分解期の花粉母細胞には減数分裂前期の変化が認められた。タベート層に接した状態を保持しながら母細胞はたがいに分離し, その後減数分裂中期に入った。第一および第二減数分裂の開始の際には細胞の収縮が起こった。葯の長辺やタベート層内面に対する減数分裂の方向を検討した。また遊離した母細胞およびその娘細胞がタベート層と常に接近した状態を保持していることを確認した。
  • 高橋 肇, 中世古 公男
    1990 年59 巻4 号 p. 778-784
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    群落における作物の生長は, 群落全体で受ける光合成有効放射 (PAR) 量とそれを乾物に変換する効率 (EPAR) とから評価できる。本研究では, 春播コムギ品種ハルユタカおよびSelpekについて群落内へ透過するPARと群落上面から反射されるPARの日変化および季節変化を測定した。また, 群落内へ透過するPARと葉身, 稈, 穂および枯死部面積からなる全表面積との関係について検討した。晴天日と曇天日の透過率および反射率の日変化についてみると, 透過率および反射率の日平均値は天候が異なっても同じであった。透過率は生長にともなう全表面積の増加とともに減少した。止葉出葉後, 全表面積は10 m2m-2以上となり, 透過率は10%以下となった後ほとんど変動しなかった。全表面積と透過率の対数値との関係は, 直線回帰があてはめられたものの, 受光係数Ksは生長ステージにともない変化した。一方, 反射率は大きく変動しなかった (およそ5%) 。群落の受光PAR量は, 透過率と反射率に入射太陽PAR量を乗ずることから算出した。受光PAR量は作物生長速度 (CGR) と直線的関係がみられたが, 受光PAR量が8 MJm-2d<-1>を越えるとハルユタカの群落のPAR利用が飽和するようであった。
  • 武岡 洋治, 筒井 芳郎, 松尾 喜義
    1990 年59 巻4 号 p. 785-791
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    松尾らが開発した大苗移植法により誘発した青立ち症イネ小穂における形態形成の変化の特徴を明らかにするために実体顕微鏡および走査電子顕微鏡 (SEM) による観察を行った。1987年四国農試で陸稲H4を本法により栽培して得た青立穂を出穂期に固定し, 実体顕微鏡下で生殖器官の変異の態様を解剖調査するとともに, 主要な変異の小穂をアセトン脱水・臨界点乾燥・金コーティングの後15 keV SEMで観察した。(1) 内部に生殖器官を欠失した小穂は全解剖小穂数 (407) の93.9%に上ったが, 18.9%の小穂が小穂を反復して分化した小穂反復型貫生体を発現していた。実体顕微鏡下で微小な突起に見えたものは明かに小穂始源体であることをSEMにより確認した。(2) 3.7%の小穂で雌ずいが多柱頭化または群生していた。(3) 殆ど全ての小穂で外穎と内穎とが変形して釣合不能になっていたが, 全体の40.0%の小穂で特に内穎が退化し, 11.5%の小穂で護穎, 外穎ないし内穎が増加していた。生殖器官を欠失した小穂は内部に微小突起が認められたことから, 生育条件により新たに貫生体を発達させる可能性があると考えた。誘発青立ち症イネの生殖器官における形態形成の変化は, 雌ずいの増生と小穂反復型貫生体の発現を特徴とし, 他の環境ストレスによる変化と共通性をもつことを明らかにした。小穂器官の形態形成と性発現の面から貫生発達の意義を考察した。
  • 前田 和美, ワディア K.D.R.
    1990 年59 巻4 号 p. 792-800
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    2亜種, 3草型のラッカセイ計30品種を用い, インドの半乾燥熱帯地域にあるICRISATの圃場条件で雨季と乾季の両作季に主茎葉の出葉経過や出葉速度 (LER) を調べ, 既報とほぼ同様の結果を認めた。すなわち, 主茎第3-4葉までは出芽後6-8日で出葉したが, その後のLERが小さくなりLERの転換点が認められた。転換点における主茎葉数は亜種の異なる2品種群および作季の間で有意差を示したが, 転換点までの日数には品種, 作季による有意差が見られなかった。開花始期は播種後約2カ月間, 雨季作よりも気温の低かった乾季作で約10日遅れたが, 開花始期主茎葉数は2品種群間で有意差を示した。出葉は規則的に進み, 開花始期までのLER (YI, YII) は亜種fastigiataの品種が亜種hypogaeaの品種よりも, また乾季作が雨季作よりも小さかった。開花始期以後のLER (YIII) は小さくなり, 品種群や作季による差異も小さくなった。両作季で降雨のない期間や, ほぼ10日毎の潅漑の間では葉がしばしば著しい萎凋の徴候を示したが, LERの反応は不明瞭で, 同じ土壌水分条件に敏感に反応した開花数増加経過とは対照的であった。種々のストレス環境下での生長反応指標としてのLERの利用についてはさらに研究が必要である。
  • 丸山 幸夫, 田嶋 公一
    1990 年59 巻4 号 p. 801-808
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    日本稲, インド稲, および日印交雑種, 合わせて51品種を用い, 葉の拡散伝導度の品種間差異を圃場条件下で検討した。幼穂形成期に測定した, インド稲と日印交雑種の葉の拡散伝導度は, 日本稲より明らかに大きかった。クチクラ拡散伝導度が葉の拡散伝導度より著しく小さいことから, この葉の拡散伝導度の品種群間の差異は, 気孔に関連した特性に起因するものと判断された。そこで, これらについて調べたところ, 気孔開口長や孔辺細胞の大きさの品種群間の差異は小さいが, 気孔密度と気孔開度には明らかな差異があり, インド稲半矮性種および日印交雑種の気孔密度と気孔開度は, 日本稲より大きい傾向が認められた。さらに, この両者と葉の拡散伝導度との関係を詳しく検討したところ, 気孔密度より気孔開度の方がより強く葉の拡散伝導度を支配していることが明らかとなった。したがって, 日本稲とインド稲または日印交雑種の葉の拡散伝導度の差異をもたらす主要な要因は気孔開度と結論される。
  • 星川 清親, 王 善本
    1990 年59 巻4 号 p. 809-814
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    倒伏したササニシキとコシヒカリの節間の形態的形質について観察を行った。両品種の節間部の横断面は, 葉鞘に包まれたものも, 茎だけのものも, 円形ではなく, 楕円形であった。この楕円形を扁平率=(1-(短径/長径))×100として表現した。両品種とも倒伏したものは倒伏しなかったものに比べて, 下位節間の扁平率が高かった。また倒伏したものは倒伏しなかったものに比べて, 下位節間が長く, さらに下位節間の短径, 長径の値がそれぞれ小さく, すなわち節間が細かった。挫折倒伏は両品種とも, 第I, II節間では認められなかった。ササニシキでは第IIIと第V節間においてわずかに挫折が見られたが, 多くは第IV節間で挫折していた。コシヒカリにおいては主に第IV, V節間で同程度に挫折していた。挫折節間における挫折位置は同節間の下位の節から上へ節間長の10%上昇した部位から, 30%上昇した部位までの間の部域であった。また挫折は節間の挫折位置の横断面の短径方向に起こることが認められた。本研究により, 下位節間の長さが節間の倒伏抵抗性に関連しているという従来の知見と一致した結果も認められたが, その他に下位節間の扁平率や節間の大さ (短径と長径) も倒伏抵抗性に関係していることが明らかにされた。また, 節間の挫折は品種により異なる下位節間で起こり, また両品種とも, 挫折は節間の特定位置および特定方向で起こるということが判明した。
  • 廣井 清貞, MAMUN Abdullah Al, 和田 富吉, 武岡 洋治
    1990 年59 巻4 号 p. 815-823
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究は, イネ属植物における穂の構造の特徴を明らかにする目的で, (1) 穂の形質を長さ・大さと数に関するものとに分けて,穂構成器官の生長と分化の面からこれらを解析し, (2) イネ属の種・系統・ゲノムごとの変異を調査し比較した。供試材料には本属の内17種41系統の野生稲および栽培稲を用いた。生長に関する形質として, 穂長・穂軸長・穂軸節間長・一次枝梗長・二次枝梗長・穂首直径を選び, 分化に関するものとして, 一次枝梗数・一次枝梗節数・一次枝梗あたりの二次枝梗数・二次枝梗節数・二次枝梗発生率を選んでこれらを調査した。計測値をクラスター分析して穂構造の特徴にもとづく類別化を行った。その結果, (1) 穂構造には広範な種間差異がみられた。(2) アジアのO. rufipogonには, 多年生型から一年生型への変遷にともない, 穂の生長と分化の両面においていわゆる"縮小効果"が働いていた。(3) Angustifoliae節の種はOryzae節の種に比較して, 分化と生長の面で劣っていた。(4) 各系統はクラスター分析の結果, 二次枝梗の生長と分化の程度により5つのグループに分類され, 各グループにおける穂の形態構造的な特徴が明らかにされた。
  • 伊藤 亮一, 玖村 敦彦
    1990 年59 巻4 号 p. 824-829
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポット栽培したダイズ (農林2号) を用いて, 水不足によりもたらされるカリウム (K) 濃度 (含水量当り) の変化を, 植物体各部分の水含有率とK含有率 (乾物重当り) の変化から解析した。給水を停止して土壌水分レベルを低くしたのちに, それをほぼ一定に保つことで土壌水分処理を行った。土壌の含水量が低下すると, 全ての葉位と茎の部位とでK濃度は上昇した。そして土壌の含水量が低い間は高く保たれた。このK濃度上昇の原因は, 低土壌水分処理の期間の長短によって異なった。つまり, その期間が短いときには葉と茎の水含有率の低下がK濃度の上昇をもたらした。低土壌水分処理の期間がさらに続くと低水分処理の個体の葉のK含有率はコントロールよりも高くなり, このことが, 葉のK濃度が上昇したことの大きな原因と考えられる。一方, 茎においては水含有率の低下が依然としてK濃度上昇の主因であった。茎と根は, Kの貯蔵所の役割を果たしており, 水不足が長くなったときには茎と根のKを使うことにより, 葉のK濃度が適正に保たれることが示唆された。
  • 徐 会連, 玖村 敦彦, 山岸 徹, 石井 龍一
    1990 年59 巻4 号 p. 830-837
    発行日: 1990/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    戸外および環境制御室内で土壌水分および地上環境の光合成に及ぼす影響を検討した。光合成は上位3葉身, 穂に1時間ごとに同化箱を装着し飽和光下で短時間内に測定した。その結果, 葉身および穂の光合成速度は地上部環境のいかんにかかわらず, 土壌水分欠乏により日中各時刻において低下すること, 低下程度は葉身では穂よりも大きく, 上位3葉身では葉位が低いほど大きいことがわかった。光合成の時刻的変化のパターンは測定当日の地上環境の推移により強く影響された。戸外では, 日中高温, 低湿, 強日射で植物からの水分損失が多いとみられた日には, 日中光合成速度の低下が起こり, 午後後半にその回復が起こった。曇雨天の日には光合成の日中低下はみられなかった。光合成の日中低下程度は第3葉では第2葉より大きく, 第1葉では第2葉より大きく, 土壌水分欠乏による光合成の低下とは葉位間順位が異なった。土壌水分レベルの高低に対応し, 日中各時刻の光合成速度のレベルに高低がみられたが, 光合成の日変化のパターンには土壌水分による差異は小さく, このパターンは主として当日の天候により支配されることがわかった。しかし, 詳細に検討すると, 土壌水分レベルが低い場合には葉身の光合成速度の日中低下がやや大きく, また夕方における回復がやや小さかった。このことから, 土壌の水分状態と地上環境とは光合成に対し主に独立的・相加的に影響するが, 両者の複合効果には若干相乗的な傾向もあることがわかった。
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