日本作物学会紀事
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水稲の冷温登熟性に関する研究 : 第4報 登熟関連形質に対する主成分分析
楠谷 彰人三分一 敬
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キーワード: , 主成分分析, 登熟, 理想型
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1990 年 59 巻 4 号 p. 679-686

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抄録

冷温登熟性品種育成のための育種母材と選抜指標を探る目的で, 内外の新旧39品種・系統の登熟力を調査した。あわせて, 登熟関連形質に対する主成分分析を行って, 登熟性に関する理想型を得ようと試みた。その結果, (1) 前期登熟力および後期登熟力の両方に顕著な品種間差が認められた。「キタヒカリ」, 「空系61094」, 「ユーカラ」, 「さちほ」, 等は前期登熟力にすぐれ, 「キタアケ」, 「きたこがね」, 「なるかぜ」等は後期登熟力が高かった。「キタアケ」, 「キタヒカリ」, 「きたこがね」, 「なるかぜ」の4品種は前, 後期を総合して高い登熟力を示し, 今後, 冷温登熟性品種育成のための交配母本として広く活用できると考えられた。(2) 主成分分析の結果, 第1主成分は乾物生産のパターンに関連する草型を表す因子と推定され, 出穂期後の乾物生産量が多い短稈穂数型品種の第1主成分が大きかった。第2主成分は根の活力や穂型を総合した転流に関わる因子と推定され, 穂首が長く抽出し, 1次枝梗着生籾の割合が低く, 止葉が下垂し, 刈株からの再生量が少ない品種の第2主成分が大きかった。(3) 供試品種の前期登熟力と第2主成分スコアとの間にr=-0.70***, 後期登熟力と第1主成分スコアとの間にr=0.69***の相関が認められた。これらから, 第1主成分スコアが大きく, かつ第2主成分スコアの小さい品種が現在想定される登熟性に関する理想型と考えられ, この方向への選抜が冷温登熟性品種育成のための指標になると判断された。(4) 得られた指標では「キタアケ」, 「キタヒカリ」, 「なるかぜ」タイプの品種は選びとれるが, 「きたこがね」タイプの品種は選び落とす可能性があるとみられた。

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