日本作物学会紀事
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ネピアグラス (Pennisetum purpureum Schumach) の側芽の生存率と伸長に及ぼす温度の影響
稲永 忍伊藤 浩司矢島 経雄稲生 英夫秦野 茂
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1990 年 59 巻 4 号 p. 747-751

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抄録
ネピアグラスの品種Merkeronを用い, 翌春の種苗として用いる, 側芽を持つ茎の冬季貯蔵方法を開発するために, 側芽の生存率や伸長に及ぼす温度の影響について調べ, さらに切断茎の冬季地下貯蔵を試みた。圃場に生育する個体の側芽は日最低気温が1℃に低下する時までは生存していたが, それが-3℃まで低下すると枯死した。切断茎に対する一時的低温処理 (0℃未満, 24時間) は側芽の生存率を50%以下に低下させた。また, いずれの処理温度 (-9, -6, 0, 2℃) の下においても, 上位節より下位節の側芽が高い生存率を示した。圃場の刈り株苗 (刈り取り位置地上10 cm) は稲わら (厚さ20 cm) とビニールフィルムで被覆したもののみ越冬し, その越冬限界温度は-0.9~4℃の範囲にあると推定された。切断茎を地下60 cmの土中に埋設貯蔵したところ, 側芽の40%が越冬した。この場合, 切断茎の節数の違いは側芽の生存率に影響を及ぼさなかった。切断茎の側芽の伸長開始能力は貯蔵温度が25~40℃の範囲で最も高く, 貯蔵温度5℃下では枯死も伸長もせず, 45℃下では枯死した。以上のことから, 翌春に種苗として用いる茎の冬季貯蔵は, 最低気温が0℃以下となる以前に茎を採取し, それを5℃前後の温度が保てる土中などに貯蔵することによって可能であるといえる。
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