日本作物学会紀事
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水稲の植傷みに関する研究 : 第6報 活着日数の差異が移植後の生育と収量関連形質に及ぼす影響
山本 由徳久野 訓弘
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1990 年 59 巻 4 号 p. 737-746

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抄録
普通期栽培の中生品種, 黄金綿の成苗について, 根あるいは葉身, および葉鞘を含む地上部の剪除程度を異にする12種類の苗を設けて移植し, 活着日数の差異が移植後の生育と収量関連形質に及ぼす影響について検討した。1. 移植後の初発分げつ迄日数と移植後7~8日目の発根量および根の活力, 並びに移植後19日目の分げつ数との間には非常に高い有意な負の相関関係がみられたことから, 初発分げつ迄日数は損傷部位および程度を異にする苗の活着日数の指標となりうるものと考えた。2. 活着日数の増加に伴って主稈葉数は増加し, 止葉展開日および出穂期は遅延した。しかし, 主稈葉数と平均出葉速度との間には高い有意な正の相関関係がみられ, 生育時期の遅延程度は活着日数にくらべて小さくなった。そして, 活着の遅れた苗ほど移植後初期の生育は劣ったが, 活着後は急速に生育速度が回復し, 出穂期における個体当りの葉面積および乾物重は全葉剪除苗と全根剪除苗では無処理苗の約90%まで, また地上部3 cm苗ではそれぞれ約80%および85%まで回復した。3. 活着日数と最高分げつ数および穂数との間には有意な負の相関関係がみられた。しかし, 活着日数と1穂重との間に有意な正の相関関係がみられたために, 株当り穂重に対する苗体の損傷の影響は小さく, 無処理苗にくらべて多くの剪除処理苗で優った。また, 株当りわら重および全重への影響は, 実験年次の気象条件等の差によって異なり, それに伴って穂重/わら重比への影響も変化した。
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