乾燥ストレスの増加にともなう根系生長の経時的な変化を, 各根系構成要素別に調査した。乾燥ストレスが増加する条件下 (乾燥区) でも, 節根および節根軸上の側根数は増加したが, それらの根数は, 圃場容水量に維持された条件 (対照区) と比較して常に少なかった。それに対して, 種子根軸上の1次側根は, 乾燥処理開始後間もなく根数増加を停止し, その後は顕著に減少し続けた。節根および節根軸上の側根の全根長の増加率は, それぞれ乾燥区でも経時的に高まったが, 実験後期においては, 増加率は低下した。この低下は, 主として新たに発生する節根と側根の長さが短いことによっていた。種子根軸上の全1次側根長も, 同様に乾燥区で短かった。各根系構成要素の数と長さの1日当りの増加率は, 一般に乾燥区で低下した。また乾燥区では, 根端生長点と皮膚細胞の生存度が顕著に減少した。対照区においても, 幼穂分化期を境に各根系構成要素の生長点の生存度の著しい低下が生じ, 幼穂分化も根端の生存度を変化させる一要因であると推測された。20日間の乾燥処理後, 植物 (30日齢) が初期しおれ点に達したとき, 再潅水し, 対照区の水分条件に戻したが, 節根軸およびその1次側根は数と長さを増加し, 生長回復を示したのに対して, 種子根軸およびその1次側根では, 生長回復は認められなかった。