抄録
群落における作物の生長は, 群落全体で受ける光合成有効放射 (PAR) 量とそれを乾物に変換する効率 (EPAR) とから評価できる。本研究では, 春播コムギ品種ハルユタカおよびSelpekについて群落内へ透過するPARと群落上面から反射されるPARの日変化および季節変化を測定した。また, 群落内へ透過するPARと葉身, 稈, 穂および枯死部面積からなる全表面積との関係について検討した。晴天日と曇天日の透過率および反射率の日変化についてみると, 透過率および反射率の日平均値は天候が異なっても同じであった。透過率は生長にともなう全表面積の増加とともに減少した。止葉出葉後, 全表面積は10 m2m-2以上となり, 透過率は10%以下となった後ほとんど変動しなかった。全表面積と透過率の対数値との関係は, 直線回帰があてはめられたものの, 受光係数Ksは生長ステージにともない変化した。一方, 反射率は大きく変動しなかった (およそ5%) 。群落の受光PAR量は, 透過率と反射率に入射太陽PAR量を乗ずることから算出した。受光PAR量は作物生長速度 (CGR) と直線的関係がみられたが, 受光PAR量が8 MJm-2d<-1>を越えるとハルユタカの群落のPAR利用が飽和するようであった。