抄録
ゴマ(Sesamum indicum L.)の開花は基部から上部に求頂的に順次進み,開花期間は8から10週間におよぶ.さく果の着生位置を異にするゴマ種子の油脂及びその微量成分含量(セサミン,セサモリン)の差異を明らかにするために,植物体を主茎では5区分(基部下位,基部上位,中央部下位,中央部上位,上部),分枝では2区分(基部,上部)した. 種子重及び種皮割合は主茎・分枝ともにさく果着生基部から上部に向かって減少した. 油脂含量は,主茎の基部下位から得た種子が最も低く (51.7%),分枝の上部から得たものが最も高かった(56.6%).油脂含量のさく果着生位置間での変動は小さかった. 一方セサミン及びセサモリンの含量は,それぞれ主茎の中央部上位及ぴ中央部下位の種子で最高値(油脂100g当りそれぞれ452.1mg, 332.0mg)を示し,また両物質ともに主茎の基部下位の種子で最低値(油脂100g当りそれぞれ187.3mg, 278.6mg)を示した. セサミン及びセサモリン含量のさく果着生位置間での変動は大きく, とくにセサモリンはこの傾向が強かった. 収穫時期と種子中の油脂含量及び油脂中の微量成分含量との関係を明らかにするために,基部下位さく果の黄緑色期と裂開始期に主茎の中央部着生さく果を採取し,比較した. 油脂含量には両期で差異が認められなかったが,セサミン及びセサモリンの含量は裂開始期で減少した. 種子の成熟過程でセサミン及びセサモリンは他の物質に転換することが示唆された.