将来予想される高CO
2濃度環境下における,作物葉のガス交換特性に及ぼす温度上昇の効果を知ろうとして,光合成の機作を異にするC
3型の夏作物(イネ,ダイズ) とC
4型作物(ヒエ, シコクビエ)とを用いて研究を行なった. ポット植えの個体を人工光グロースキャビネット内で, CO
2濃度350 (標準区)及び500 (高濃度区)μmol mol
-1の下に4~5週間昼夜連続して処理し,着生したままの最上位完全展開葉のガス交換特性を,開放系の測定装置によって調べた. 本実験では,処理期間中の高CO
2濃度がガス交換能を僅かに低下させたが,有意ではなかったので,高濃度区の作物のみにつき検討を進めた. CO
2交換速度のCO
2濃度(0~500μmol mol
-1)依存性は,温度の影響を強く受け,調べた範囲(23,28,33℃)では高温ほど高CO
2濃度下でのCO
2交換速度が大きく, C
4型作物はC
3型作物よりも温度に対する反応が大きかった.蒸散速度は高温ほど犬きかったが, CO
2濃度上昇に伴ない一様に低下し,その低下はC
4型作物の方が大きく,気孔コンダクタンスの低下と並行していた.作物葉の水利用効率は C
4型が高く, またCO
2濃度上昇に伴なって高まったが,温度の影響は明らかではなかった. さらに,作物葉における気孔を介したガス交換の制御に関連して考察を行ない, CO
2濃度と温度の上昇が相伴なう環境下では, C
4型作物の光合成能力がかなり高まることを推測した.
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