抄録
過湿条件が秋ダイスの子実重ならびに収量構成要素に及ぼす影響を明らかにするとともに耐湿性の品種間差異を検討する目的で, 生態型IIIc, IVc及びVcに属する20品種を地下水位の高低を設定できる水田転換畑圃場で栽培し, 第3~第4本葉展開期から成熟期まで過湿処理を継続して行った. 試験は1983年及び1984年の2回行った. 両試験年度ともほぼ同様の傾向が認められ, 1984年の結果についてみると, 過湿区の子実重が対照区に比較して5%水準で有意に減少したのは12品種, 有意差が認められなかったのは8品種であった. 各品種の子実重の減少程度と早晩性(対照区生育日数)及び収量性(対照区子実重)との間には関連が認められなかったが, 茎重, 分枝数及び総節数の減少程度との間に0.1%水準で有意な正の相関関係が, 主茎節数及び1節莢数の減少程度との間に1%水準で有意な正の相関関係が認められた. また, 標準偏回帰係数は総節数で最も大きく, 生育後期に決定される形質ほど小さかった. これらの結果から, 耐湿性が強いダイズ品種は過湿条件下においても総節数や分枝数など栄養生長量の低下が少なく, その結果として子実重の減少程度が小さいことが示唆された.