日本作物学会紀事
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水稲の分げつ性に関する研究 : 第8報 個体内各茎の分げつ位と葉数との関係
後藤 雄佐星川 清親
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1991 年 60 巻 3 号 p. 392-399

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抄録
孤立状態で育てた水稲(品種ササニシキ, トヨニシキ, アキヒカリ)の各分げつについて, 分げつ位と葉数との関係を検討した. まず, 基部から求頂的にみた分げつ位を個体内での出現順に整理した相対分げつ位(RTP:同じRTPは同伸分げつを表す) と, 同様に整理した求頂的な葉位, 相対葉位(RLP:同じRLPは同伸葉を示す) とを用いて解析した. RTPが同じ場合, 分げつ次位が高いほどその止葉のRLPは大きかった. 幼穂分化期の各分げつの齢から, この原因は主茎の幼穂分化開始期における各分げつの相対葉齢差(主茎と各分げつとの葉齢の進み方の差)が分げつ次位の高いほど大きくなることに起因するものであった. また幼穂分化開始後に出現した分げつについては, 遅く出現したものほどその止葉のRLPは大きくなる傾向が認められた. 次に, 止葉節を起点とした求基的分げつ位(bT位)を用い, 葉数との関係を見ると, 分げつ次位や品種による差はほとんど認められなかった. bT位と葉数との関係は, bT 6より下位の分げつでは, 1節位上がるごとに葉数は約1枚減少したのに対し, bT 5より上位の分げつでは1節位上がるごとに葉数は約0.5枚減少した. 母茎が幼穂分化を始めた時, bT 6は分げつ芽として形をととのえた直後であり, bT 5はその直前の状態と推察できる. また, 主茎が幼穂分化を始めると, その時出現していた分げつはほぼ一斉に幼穂形成期に移行することから, 分げつ芽が形成される時期が, 主茎の栄養生長期なのか生殖生長期移行後なのかによって, 分げつ位と葉数との関係が異なったと考えた.
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