日本作物学会紀事
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カンショにおける個葉光合成速度の支配要因の解明 : 第1報 表皮剥離法および表皮剥離葉の光合成速度について
窪田 文武縣 和一諸隈 正裕
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1991 年 60 巻 4 号 p. 510-514

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抄録
カンショ葉の表皮を剥離して気孔の影響を除外し, 同化箱法により直接, 葉肉組織の光合成速度を測定した. 表皮剥離に先立ち, 個葉の表側表皮に透明テープを貼って葉の物理的強度を補強した. 裏側表皮には強粘着性の布テープを貼り, これを剥すことによって裏側表皮を葉肉組織を損傷することなく剥離することができた. 剥離面積は2.5cm×2.5cmをやや上回る大きさとした. 表皮剥離および非剥離個葉の光合成速度を小型同化箱で測定した. 表皮剥離後の光合成速度は, 剥離前に比較して大幅に上昇する場合が多く見られた. 光合成速度の上昇率は, 剥離前の個葉の気孔開度や光合成速度によって大きく異なった. 概して, 気孔開度が小さい個葉を剥離した場合, 光合成速度の上昇率は大きかった. この事実は気孔が閉鎖している場合においても葉肉組織の光合成速度は潜在的に高く維持され得ることを示唆する. 気孔伝導度と表皮剥離効果(剥離後光合成速度/剥離前光合成速度)との間には直角双曲線的関係が存在し, 気孔伝導度が0.2mol m-2s-1以下の固葉では剥離効果が極めて大きかったのに対して, 0.2mol m-2s-1以上では剥離効果はほとんど認められなかった.
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