抄録
ラッカセイ個葉の光合成速度と蒸散速度を同化箱法で測定したところ, 環境条件を一定に保持したもとでも, 約50分周期の極めて顕著な周期的変化が長時間にわたって観察された. 光合成速度と蒸散速度の変動は極めてよく同調しており, 両者の周期的変化は気孔の周期的開閉によるものと考えられた. また, 地上部全体の蒸散速度も個葉の蒸散速度の周期的変化とよく同調していた. したがって, 気孔の周期的開閉は地上部全体で同調して生じていることがわかった. 個葉の蒸散速度の周期的変化は, 同化箱に低CO2濃度(10 ppm以下)の空気を導入した場合も消失しなかった. よって, この周期的変化の発現に対して, 葉肉細胞の光合成活性の変化にともなう気孔内腔のCO2濃度の変化は関与しないと考えられた. 一方, 測定に用いた個葉以外の葉の蒸散を抑制する処理を行なうと, 測定葉の光合成速度と蒸散速度の周期的変化は消失した. さらに, 蒸散速度の周期的変化とそのときの吸水速度との関係を調べたところ, 吸水速度にも蒸散速度と同様の周期的変化が観察された. しかし吸水速度の変動の位相は蒸散速度に対して10~20分遅れており, そのため蒸散速度と吸水速度の差である個体の水収支も周期的に正負に変化していた. 以上の結果から, ラッカセイの光合成速度と蒸散速度の周期的変化は, 地上部の蒸散量に対して根による吸水能力が十分ではない場合に, 個体全体の水分収支の変動により気孔が個体全体で同調的に開閉するために生じると考えられた.