抄録
土壌水分欠乏, 光合成測定に先立つ生育環境の低空気湿度および両者の複合が光合成とその関連要因に及ぼす影響を葉位別に検討した. 実験は乳熟期の材料を用い, 規制環境下で行われた. 光合成低下程度の葉位間の順位からみて, 低空気湿度の影響のしかたは土壌水分欠乏のそれと異なった. すなわち, 土壌水分欠乏による光合成低下程度は, 止葉<第2<第3葉の順位であったのに対し, 低空気湿度によるそれは, 止葉>第2葉<第3葉であった. 気孔伝導度(gs), 葉肉伝導度(gm), Rubisco含量の変動は光合成の変動とほぼ並行していた. この事実から, 土壌水分欠乏および低空気湿度の上記のような葉位別光合成に対する影響は, 気孔開度と葉内光合成活性の対応する変動を基礎として起こることが示唆された. 土壌水分欠乏による葉内水ポテンシャル(ψ)の低下程度は上位3葉間ではほとんどちがわなかった. これに対し, 低空気湿度によるψの低下程度はとくに止葉で顕著であった. ψの低下に対するgs, gm, およびRubiscoの感受性は下位葉ほど大であった. これらのことから, 土壌水分欠乏による光合成低下程度の葉位間差異は主として, ψの低下に対する気孔, 葉肉光合成機構の感受性の差異にもとづくこと, 低空気湿度による光合成低下程度の葉位間差異にはこの感受性の差異に加え, ψの低下程度の葉位間差異が密度に関係することがわかった. 土壌水分欠乏と低空気湿度が複合した場合には, 両者それぞれの効果がほぼ相加的にあらわれた.