抄録
イネの節間伸長制御機構に関する研究の一環として, 光条件下の水稲幼植物の第2節間を対象に以下の実験を行った. 供試材料は, 日本型水稲品種ササニシキおよびインド型浮稲品種 Leb Mue Nahng 111(LMN) およびHabiganj Aman VIII (HA)である. 種子を消毒後, 各種生長調節物質を含む試験液に置床し, 30℃, 連続照明条件下で14日間培養した. 結果の概要は次の通りである. (1) 日本型イネでは, ジベレリンA3(GA3)単独処理の場合, 10-3 M 程度の高濃度の処理でのみ, 第2節間の伸長が誘起された. 一方, 低濃度 GA3 (10-5 M~10-6 M) 処理はトリアジノン(TA), あるいは, アブシジン酸(ABA)+エチレン(ET), あるいはポリエチレングリコール(PEG)との共存下で, 節間伸長をもたらした. 他方, 浮稲では, 低濃度GA3 (10<-5> M~10-6 M)の単独処埋により節間が伸長した. また, 浮稲品種HAでは, GA3を含まないABA+ETの併用処理でも伸長した. (2) 第2節間の伸長に対して, GA3およびETは促進的に作用したが, ブラシノライド(BR)やベンジルアデニン(BA)は抑制的に作用した. インドール酢酸(IAA)は, 効果を示さなかった. ABAは, 品種やGA3の処理濃度によって, 促進あるいは抑制のいずれかの作用を示した. (3) 鞘葉や中茎では, BR処理による顕著な伸長促進効果が見られたが, 第2葉鞘, 第2葉身, 第2節間では, GA3による促進効果が見られた. 一方, ABAは葉鞘や葉身の顕著な伸長抑制をもたらした.