日本作物学会紀事
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稚苗植水稲の栽植様式と栽植密度が生育並びに収量に及ぼす影響
秋田 謙司田中 尚道
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1992 年 61 巻 1 号 p. 80-86

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抄録
稚苗植水稲個体群の密度効果を明らかにするために, 栽植様式および栽植密度を変えて日本晴を標肥条件下で栽培し, 幼穂形成期, 出穂期並びに成熟期の諸形質に及ぼす影響について検討した. 栽植密度は正方形植が9~100株/m2区, 並木植が10~100株/m2の範囲であった. 草丈は幼穂形成期には正方形植では49株/m2区で最も長く, これより疎植でも密植でも短かった. しかし, 出穂期や成熟期は疎植区で長く密植区で短かった. 一方, 並木植ではいずれの生育段階においても疎植区で長く, 密植区で短かった. 単位面積当り茎数は, 幼穂形成期には正方形植は100株/m2区が最高で, 出穂期には64株/m2区が最高であった. これに対して並木植ではいずれの時期でも100株/m2が最高を示した. 単位面積当り地上部全重は, 正方形植では幼穂形成期並びに出穂期には64株/m2区が最高で, 成熟期には49株/m2区が最高であり, これより疎植でも密植でも減少した. 並木植の全重は, いずれの時期にも密植区ほど大きかった. 収量構成要素についてみると, 穂数は正方形植では64~81株/m2区, 並木植では100株/m2区が最高であった. 1穂籾数は, 密植になるほど少なかった. 登熟歩合は, 正方形植では64株/m2区, 並木植では70株/m2区が最高でこれより疎植でも密植でも低下することが認められた. 精籾千粒重と栽植密度との間に有意な相関関係が認められなかった. その結果, 面積当りの精籾重は正方形植では25株/m2区, 並木植では70~100株/m2区が高い値を示し, 最高収量を得る最適密度は栽植様式によって異なっており, 新しい栽培技術の確立はつねに品種特性や環境条件を十分理解して行われるべきものと考えられた.
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