日本作物学会紀事
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イネ科作物4種における耐乾性機構の種間差異
稲田 勝美松浦 朝奈山根 昌勝
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1992 年 61 巻 1 号 p. 87-95

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抄録
イネ科作物における耐乾性の種間差異を明らかにするため, ヒエ, モロコシ, パールミレットおよびトウモロコシを用いて水耕および圃場実験を行った. 水ストレス処埋は栄養成長期に12-14日間行い, 水耕実験ではポリエチレングリコール6000を水耕液に加えて最終濃度を200g/1000g (浸透ポテンシャル, -0.93MPa)とする方法, および圃場実験では灌水を停止する方法によった. 生育および葉身の水分状態の測定は, 処理開始時, 処理中および処理解除後にそれぞれ行った. 処理による乾物重の低下はパールミレットとモロコシが比較的小さく, ス卜レス解除後の回復ではモロコシとヒエが他よりも速かった. 処理区では, 水ポテンシャル(Ψ)の低下に対する浸透ポテンシャル(π)の低下が大きかったが, トウモロコシでは対照区との間に差がみられなかった. Ψおよびπの低下に伴う相対含水率の低下する順序はトウモロコシ>ヒエ>モロコシ>パールミレットであった. また, 浸透調整(OA)の大きさは, モロコシ>ヒエ>パールミレット>トウモロコシの順であった. 以上の結果から, モロコシとヒエ, 特にモロコシは高いOA能力によって, パールミレットは大きい水分保持能力によってそれぞれ乾燥に耐えるが, トウモロコシはOA能力および水分保持力が小さいためしおれ易いと結論された.
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