抄録
六倍体ライコムギの発芽及び幼苗期における生長に対する塩化ナトリウムの影響を明らかにするため, 10品種を用いて室内実験を行った. 用いたNaCl水溶液の濃度は0, 50, 150, 250, 及び350mMである. 各濃度別に用意した濾紙敷の発芽容器に播種した後, 各発芽容器にそれぞれの濃度の液を等量ずつ与え, 以後, 濾紙が乾燥しないように各発芽容器にそれぞれの濃度の液を1日2回等量ずつ2週間にわたって加えた. その結果, 250及び350 mM区ではどの品種も萌芽は見られたが, 発芽には至らなかった. それ以下の濃度区ではNaClの濃度が高くなるほど幼苗の生長は抑制された. 幼苗期の苗条の生長は, 種子の萌芽及び発芽や根の伸長よりも塩類に対する高い感受性を示したので, 六倍体ライコムギの生育初期における耐塩性検定の重要な指標になると考えられた. 耐塩性には品種間差異が見られ, 供試10品種の中で Currency, Yoreme, Welsh 及び Beaverは幼苗期の諸形質において高い耐塩性を示し, 一方, Broncoの耐塩性は比較的低かった. ただし, このような耐塩性の品種間差異を供試品種の細胞質及び染色体構成の違いに帰することはできなかった.