日本作物学会紀事
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水稲の耐倒伏性に関与する稈の物理的性質の品種間差異
大川 泰一郎石原 邦
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1992 年 61 巻 3 号 p. 419-425

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抄録

国内外22品種の水稲を用いて, 圃場条件下における耐倒伏性の品種間差異を検討した. わが国の長稈品種は倒伏しやすく, 国外の品種に比べていずれも稈基部の挫折強度を表す葉鞘付挫折時モーメントが著しく小さかった. 収穫期まで倒伏しなかった長稈品種および短稈品種は, 登熟期間を通じて倒伏指数の増加程度が小さかった. このことには, 地上部モーメントは大きいのに葉鞘付挫折時モーメントが高く維持されていることが関係しており, 葉鞘付挫折時モーメントは耐倒伏性と密接に関与する性質で, 品種によって大きく異なることがわかった. 葉鞘付挫折時モーメントが異なる要因を検討した結果, 葉鞘付挫折時モーメントの小さいわが国の品種はいずれも葉鞘補強度が小さく, 稈の挫折時モーメントも小さかった. 一方, 葉鞘付挫折時モーメントの大きい台中189号, 台農67号のような長稈品種は, 葉鞘補強度が大きく, 断面係数および曲げ応力がともに大きいことによって稈の挫折時モーメントが大きかった. また, 葉鞘付挫折時モーメントの大きい短稈品種には葉鞘の老化が遅く葉鞘補強度が49%と高いアケノホシ, 稈の断面係数が著しく大きいことによって稈の挫折時モーメントが大きい密陽23号のような品種があった. 本研究の結果, 葉鞘補強度, 断面係数および曲げ応力を大きくし稈の挫折時モーメントを大きくすることによって, 長稈穂重型品種に強稈性を付与することが可能であることがわかった.

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